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「もう後がないのは分かっています」盟友・磯村嘉孝も去り、来季いよいよ正念場を迎えるカープ堂林翔太34歳の心中とは
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前原淳Jun Maehara
photograph byKYODO
posted2025/11/10 06:00
今季序盤は四番を任されることもあったが、結果を残せず、打率.186にとどまった堂林
来季は最初から一軍で競い合える立場にはなく、二軍で結果を残して這い上がっていく立場にあると自覚している。そして、チャンスをものにできなければ、もう次はないことも分かっている。
「打って、結果で示すしかない。至ってシンプルなことだと思う」
若手が宮崎県日南市での秋季キャンプで汗を流す秋季練習期間も、マツダスタジアムでひとりバットを振った。山なりの打撃マシン、高速に設定されたマシンと交互に向き合った。地元メディアには「アーチ量産」「長距離打者へ」と景気のいい見出しが躍ったが、自分の現在地は見失っていない。
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「この2年間、成績を残せなかったので、例年よりも振ろうと。何かを変えるというよりも、(バットに)当てる確率、触れる確率を上げていかないといけない。まず、バットに当たらないと始まらない。確実性が上がれば自然と長打は増えると思っている」
不器用なりのやり方
形にこだわるのをやめた。メジャーで活躍するカブス鈴木誠也の打撃理論も参考にしてきたが、今オフは自分自身と向き合う。毎年1月に行っていた鈴木との合同自主トレには参加しない。
「自分の場合、形にこだわりすぎても良くないのかなと。タイミングを取るのがへたくそなので、合っていない中でも捉えられる確率を上げていかないといけない。自分がどのコースにもバットを出しやすいところから逆算していった結果が、自分のフォームになればいい」
同じ球速と一定のタイミングで投じる通常のマシンだけでなく、データから実際の投手の球質を再現できる最新の投球マシン「iPitch(アイピッチ)」でも振り込んでいる。実戦から離れるオフ期間も、実戦に近い感覚の打撃を体にしみ込ませていく。
変わることよりも継続することを選んだ。不器用には不器用なりのやり方がある。それこそ、中学時代から磯村に示してきた姿のはずだ。
