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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「ある意味、ギャンブルです」全日本大学駅伝で駒澤大が快勝できた戦略の“前提条件”とは「エース佐藤圭汰の復帰でできた、攻めの配置」
text by

佐藤俊Shun Sato
photograph byTadashi Hosoda
posted2025/11/06 17:55
「山川」コールのなか、トップで伊勢路のゴールテープを切った駒澤大の主将、山川拓馬
だが、ここから攻めの中盤が機能したのだ。
5区で伊藤が襷を受けたとき、トップの中央大からは35秒のビハインドだった。だが、伊藤はスタートから爆走し、5キロ過ぎにはトップに立った。6区の村上に襷渡しをする際には、2位の国学院大に対して52秒もの差をつけていた。
藤田監督の狙い通りの展開になったのだ。
つなぎではなく、攻めの5区
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1年時の箱根6区以来の区間賞を獲った伊藤は、優しい笑みを浮かべていた。
「35秒差であればいけると思っていましたし、中間点のタイムが出雲の4区のときよりも速かったので、これはいけると思いました。自分がトップを取り返して村上にできるだけ差をつけた状況で渡し、大砲の圭汰と山川につなぐことができれば勝てると思っていました。
つなぎの5区ではなく、攻めの5区としてゲームチェンジャーの役割を与えられて、それをしっかり果たせましたし、区間賞もやっと獲れたので良かったです」
伊藤がトップに立ち、6区の村上も区間2位の走りで2位の中央大との差を1分04秒に広げて、7区の佐藤に襷渡しをした。この時点でほぼ勝負がついたと言えよう。
2位につけた中央大の藤原正和監督は「5区に伊藤君を置けるところがさすが駒澤さんです。試合巧者ですし、自分たちとの経験の差が出たと思います」と語り、藤田監督の見事な策と駒澤大の強さを改めて感じたという。
不調でも諦めなかった安原の貢献
藤田監督は、講じた戦略が機能し、優勝できたのは、5区の伊藤の前の4区、安原の諦めない走りがあったからだという。
「4区を走った海晴は、トップから離れてしまって申し訳ありませんと言っていましたが、ズルズルと落ちていくのではなく、なんとか前を追える状況で踏み止まった。だからこそ、伊藤の爆発的な走りが生まれたと思っています」
攻めの中盤での鮮やかな逆転劇は、まるで映画のワンシーンのようだった。そして、この優勝を実現したのには、もうひとつ大きな要素があった——。
〈つづく〉

