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プロ野球PRESSBACK NUMBER
《阪神1位指名》創価大学が揺れた“3球団競合”ドラフトウラ話「最高です!」はしゃぐ藤川監督に現場も歓喜…その時記者が見た「立石正広の意外な表情」
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曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byKeiji Ishikawa
posted2025/10/28 11:02
10月23日、創価大学の会見場で指名を待つ立石正広
藤川監督「最高です!」立石の表情が変わった瞬間
石垣元気の交渉権はロッテが獲得した。17時16分、立石の抽選が始まる。まず新井監督がくじの入った封筒を引き、新庄監督、藤川監督がそれに続く。開封の合図。床に落とした封筒を拾い上げてくじを開いた藤川監督の表情に、一瞬、驚きの色が浮かぶ。そして新井、新庄両監督の反応を伺ったうえで、「交渉権確定」のくじを握りしめた右手を高く掲げた。満面の笑みだ。
創価大の会見場が、ふたたび大歓声に包まれた。間違いなく、立石にもさまざまな思いが去来していたはずだ。それでもなお、浮ついた反応を示すことはない。1位指名してくれた広島や日本ハムへの配慮もあったのだろう。
直後のインタビューで目尻を下げた藤川監督が「最高です!」と興奮をそのまま口にして、「タイガースに入ったつもりで見てもらいたい」と日本シリーズでの“共闘”を呼びかける。その言葉に、張り詰めていた立石の表情がようやく緩んでいく。
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創価大では中継の放送を一時中断し、速やかに立石の会見がセッティングされた。事前の評価からすれば3球団競合は想定内のようにも思えたが、本人は「こんなにもたくさんの球団が、と率直にすこし驚いています」と謙虚にコメント。抽選の瞬間の心境について問われると、「いやあ、ドキドキしました」と素直な感想を口にした。
気になった、立石の“ある発言”
会見で気になったのが、プロでの目標について問われた立石の発言だ。
「あんまり目標を言うと息苦しくなっちゃうんで、まずは一軍で出場できるように頑張りたいです」
さらに阪神のチーム力に敬意を払いつつ、「到底すぐに出られるような実力ではない。これからの時間の使い方が大事になってくる」と気を引き締めた。どこまでが本心なのかはわからない。だが、多くの選手が過大な目標を掲げがちなドラフト直後の会見において、即戦力と評価されながら控えめな言葉を残した冷静さが、逆説的にプロでの成功を強く予感させた。
自身の緊張をよそに盛り上がる野球部の仲間たちに「楽しそうだな」と皮肉っぽくコメントし、笑いを誘った立石。「見えないところでも負担をかけてきたと思うので……」と両親への感謝を述べて会見を終えると、周囲の記者から「なんか、泣けたね」「ドラフトっていいね」といった声が聞こえてきた。
しかし、ドラフト会議は感動的なだけのイベントではない。立石の会見が終了した17時34分から、支配下選手の指名が終わる19時3分までの89分間で、会見場にいた誰もがその「残酷さ」を思い知らされることになる。



