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プロ野球PRESSBACK NUMBER
《阪神1位指名》創価大学が揺れた“3球団競合”ドラフトウラ話「最高です!」はしゃぐ藤川監督に現場も歓喜…その時記者が見た「立石正広の意外な表情」
text by

曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byKeiji Ishikawa
posted2025/10/28 11:02
10月23日、創価大学の会見場で指名を待つ立石正広
会見場が沸いた、阪神・藤川監督の登場
16時20分、大島と山崎を含めた野球部の面々が報道陣の後方に着席する。部員たちはもちろん、ドラフト候補の両名も談笑したり、写真を撮ったりする余裕がある。不安や緊張を誤魔化しているというよりも、祝祭的なこの状況を楽しんでいるように映った。
さらに野球部の家族や応援団に続いて、一般の学生たちも入場してきた。聞けば、創価大の学生なら誰でも入ることができるという。ホールは後列までぎっしりと観覧の学生で埋まった。
そして16時36分、立石が壇上にスタンバイした。拍手を浴びた主役は照れくさそうに会釈をする。直後、TBSを映す会場のスクリーンに立石の紹介VTRが流れ、野球部員から「うおー!」と歓声があがった。「いじりすぎ」とばかりに苦笑する立石に向けて、大島が身振り手振りで前髪を整えるように伝える。手ぐしで軽く髪を整え、「大丈夫?」と視線を送る立石。言葉を介さないこのやり取りが、なぜか強く印象に残った。
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16時50分、ついにドラフト会議の中継が始まった。カメラが広島の新井貴浩監督をとらえ、「立石の1位指名を公表」とアナウンスされると拍手が起こる。だが12球団の入場シーンで創価大の会見場がひときわ盛り上がったのは、阪神の藤川監督が姿を見せたときだった。黄金期を迎えつつある阪神が、東京の学生の間でも高い人気を誇っていることがよくわかる。
立石は気持ちを鎮めるように、中継が映るモニターをじっと見つめていた。
「立石、まさかの単独指名か…?」
17時7分。1巡目の指名が読み上げられる。ヤクルトは松下歩叶(法政大)、ロッテは石垣元気(健大高崎高)、そして広島は宣言通り立石正広。拍手と同時に、会見場に喜びと安堵の声が広がる。立石は表情を崩さない。
なおも1位指名は続く。西武は小島大河(明治大)、中日は中西聖輝(青山学院大)、楽天は藤原聡大(花園大)、巨人は竹丸和幸(鷺宮製作所)、オリックスは石垣元気。初めての指名重複だ。ひとつひとつの指名にどよめきが起こるなか、「立石、まさかの単独指名か……?」といった空気が漂い始める。続くDeNAの指名で佐々木麟太郎(スタンフォード大)の名前が読み上げられると、野球部員を中心に「えーっ!」と驚きの声があがった。
残すは3球団。ここで新庄剛志監督の日本ハムが立石を指名する。「ついにきた!」とばかりに、創価大の会見場のボルテージが上がる。クライマックスはここからだった。
「第1巡選択希望選手、阪神。立石正広」
広島や日本ハムの指名を凌駕する爆発的な歓声があがった。壇上の立石だけが表情を変えない。いや、変えられない。何があっても感情を見せないように、自らを律している。
最後にソフトバンクが佐々木麟太郎を指名して“サプライズ重複”となったところで、1巡目の指名が終了した。会見場の空気がわずかに弛緩する。まだ、もっとも重要な抽選が残っている。立石の交渉権を引き当てるのは広島か、日本ハムか、阪神か。


