NumberPREMIER ExBACK NUMBER
吉田正尚&山本由伸をドラフト指名で獲得…オリックスを3連覇に導いた敏腕編成部長が語る人材発掘法「いいと思う人を取るんじゃなく、マッチする人を…」
text by

米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/11/10 17:00
オリックスの黄金期を支え、今はともにメジャーで活躍する吉田正尚(左)と山本由伸
加藤は広い編成室の壁一面に、全12球団の選手構成や過去10年間のドラフト指名選手の一覧などをズラリと貼り出した。
「それを見ると、やはり1、2位で指名された選手の残存率が高いチームは優勝争いができる。その点でオリックスは、一軍で主軸になっているのが金子千尋などわずかしかいませんでした。勝てないチームには同じような傾向があって、3位ぐらいまでで入った選手が機能しておらず、チームの構成がおかしい。だいたい優勝するチームは24、25歳あたりが柱になるんですが、オリックスは大学と社会人を経て入る選手が多かったので、年齢層が高めでした」
「いいと思う人を取るんじゃなく…」
様々なデータを照らし合わせて自軍の現在地を把握していった。一定の評価に満たない選手を整理し、その補充としてドラフトの方針を立てる。その年のドラフト対象選手と、チームに在籍している選手の評価を比較し、即戦力として獲得する選手、次世代のレギュラー候補として狙う選手を決定していく。
ADVERTISEMENT
「いいと思う人を取るんじゃなく、チームにマッチする人を取るんです」
その結果が'14年の1位・山崎福也であり、'15年の1位・吉田正尚だった。
'14年当時、左右の比率で見るとオリックスには右のスタンダードな投手が多かった。
「左でストライクを取れる投手が必要でした。剛球はいらなくて、変化球でストライクが取れればいい。それで福也しかいないという最終的な判断になりました。その上で2位は、将来への伏線を張りたかったので、高校生野手の宗佑磨で行きました」
'15年は高山俊の評価が高く、2球団が競合した。オリックスの中でも高山を推す声は多かったが、加藤は早い時期から1位は青山学院大の吉田と決めていた。
「高山がダメなんじゃなく、いい選手なんですが、うちが欲しい選手ではなかった。マッチングしなかったんです。彼はアベレージタイプで、うちには似たような選手がいたし、投手にダメージを与えるようなタイプではなかったから。茂木栄五郎もいいと思いましたが、彼もどちらかといえばユーティリティタイプ。そうではなく、長打のスペシャリストが欲しかったんです」
補強ポイントであると同時に、加藤は常にチーム内競争も頭に入れていた。
「T-岡田がちょっとくすぶっていたから。クビを切るにはまだ年齢的に早かったし、トレードも考えたけれど、『Tはダメだ』と球団に言われた。だから正尚を獲得することでTを焦らせなければという狙いもありました」
吉田を見るため、MERSの影響で渡航が危ぶまれる中、韓国で行われたユニバーシアードにも足を運び、初対戦の外国人投手への対応も確認。そして最後の決め手となったのが、4年秋の東洋大戦だった。
【続きを読む】サブスク「NumberPREMIER」内「いいと思う人を取るんじゃなく…」吉田正尚&山本由伸を見出しオリックスを3連覇に導いた“イノベーター編成部長”の人材発掘法とは「編成はどちらかといえば魚屋で」で、こちらの記事の全文をお読みいただけます。
Number1130号「黄金期を築くドラフト戦略。」*書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

