テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER
「オオタニはジョーダンのようだ」ベッツもフリーマンも敵将も絶賛の大谷翔平だが「たまたま僕が」神の領域MVPに笑顔は一切なく…ドジャースPS裏話
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柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph byNaoyuki Yanagihara
posted2025/10/24 11:05
3本塁打に7回途中10奪三振無失点でMVP獲得。それでも会見の大谷翔平に笑顔はなかった
初回先頭に四球を与えた後、3者連続奪三振。2番ジャクソン・チョウリオを空振りに仕留めた直球はこの日最速の100.3マイル(約161.4キロ)まで上がった。直後の打席。フルカウントから右翼席上段へ先制の決勝弾を突き刺した。
PSでは2本目、登板日ではレギュラーシーズンとPSを含めてメジャー初の先頭打者弾は始まりに過ぎなかった。3—0の4回は右翼最上段コンコースの屋根に直撃して外に出た飛距離469フィート(約143メートル)の場外弾。4回からスプリットを解禁したマウンドでも躍動し、投手復帰後最多の10三振を奪った。6回0/3を2安打無失点、100球で交代した後の7回は中堅左横へ打ち込み、投打同時出場では日米通じて初の1試合3発で度肝を抜いた。
「皆さん、今日は美味しい酒を…」5万人超が大歓声
PS同一年の5本塁打は09年4本の松井秀喜(ヤンキース)を超えて日本選手歴代トップ。PSの1試合3発はベーブ・ルース(ヤンキース)らに次いで12人目(13度目)の快挙だが、これを勝利投手の立場で達成できるのは大谷しかいない。4連勝で2年連続のワールドシリーズ(WS)進出を決めた。
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試合中にはドジャースが勝った場合の報道陣の「動線に関する案内」がMLBから配られ、試合直後に三塁側からグラウンドに入ることが許された。グラウンドには特設ステージが設置され、ナイン、スタッフら全員が集まる中、ロバーツ監督、司会者、大谷が最前列に並んでいた。大谷がリーグ優勝決定シリーズMVPに選ばれたことが、すぐに分かった。
その後、司会者やロバーツ監督からMVPが発表。ステージ上のインタビューで大谷は「全員で勝ちきったので、あと4つ全力で勝ちに行きたい。皆さん今日は美味しいお酒を飲んでください」と、5万2883人の超満員のファンに呼びかけ、地鳴りのような大歓声を浴びていた。
会見場に現れた大谷に、笑顔は一切なかった
直後に今季4度目のシャンパンファイトが室内打撃練習場でスタート。私はその取材を同僚の杉浦大介通信員に任せ、会見場で大谷を待った。
ただ、意外だった。シャンパンファイトを終えて会見場に姿を見せた大谷に笑顔がなかったからだ。
先に行われた米メディアからの投打の活躍に関する質問については「一番は登板の日なので先発ピッチャーの役割をこなしたいなという気持ちで入りました」と振り返り、登板日の打撃については、こう冷静に自己分析した。

