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「今日は何か起こるぞ…と思ったんだ」ドジャース同僚が振り返る大谷翔平“奇跡の一戦”直前のある予兆…キケは思わず「彼になるのって、楽しいだろうな」
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一野洋Hiroshi Ichino
photograph byGetty Images
posted2025/10/23 06:10
NLCSの最終戦で3本のホームランを放った大谷翔平。特に2本目は推定飛距離143mの場外弾という規格外の一発だった
マウンドに立てば、観客の視線は吸い寄せられ、一球ごとにどよめきが波のように広がっては静まり返っていった。デーブ・ロバーツ監督は試合後、短く感想を述べていた。
「彼が“地球上で最高の選手”である理由が、今夜、すべて詰まっていた。多くの人が一生忘れられない夜になったはずだ」
昨シーズンのワールドシリーズでMVPに輝いたフリーマンさえも、笑いを交えながら語った。
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「ときどき自分の目を疑って、彼の体を触って確かめたくなる。本当に鋼鉄でできているんじゃないかと思うほどだ。最高の舞台で、あんなことをやってのける。きっとこの試合は、“ショウヘイ・オオタニの試合”として語り継がれるよ」
キケは笑いながら「彼になるのって…」
キケ・ヘルナンデスは呆れたように少し笑って、こんな言葉を紡いだ。
「彼になるのって、楽しいだろうな」
2017年には彼自身も3本塁打でチームをワールドシリーズに導いたことがある。しかし、10個の三振を奪ってはいないし、合計1342フィートも打球を飛ばしてはいない。
「この世で、いや野球の歴史で――こんなことができるのは彼だけだ」
その声には、かつて同じ舞台に立った者だけが知る、心からの敬意とユーモアが滲んでいた。
リリーフのアレックス・ベシアもただ首を振るしかなかった。
「こんなの見たことない。これから何年も語られると思う。ピッチングでもバッティングでも、あれだけのことをできる人間は他にいない。本当に、誰もいない」

