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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「先発時代、試合中にセルフ投げ込み」ソフトバンクCS突破の立役者“新・守護神”杉山一樹の豪快すぎ素顔「監督、杉山が宇宙と交信しています」
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/10/21 18:30
シーズン31セーブでセーブ王の杉山。CSでもソフトバンクが勝利した3試合すべてに登場した
今から3年前、私は“試合中の投げ込み”という、珍光景の目撃者になった。
先発しながら自軍攻撃中にブルペンで投げ込み!?
2022年4月9日。
ウエスタン・リーグ公式戦のオリックス戦。杉本商事バファローズスタジアム舞洲は三塁側ベンチ横にブルペンがある。扉を開けると、すぐにグラウンドにつながっている。
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先発は杉山だった。初回から四球が絡んでの2失点。投じた27球中、14球がボールだった。すると、杉山が前代未聞の行動に出た。イニングが終わると、ベンチに戻らず、そのままブルペンへ向かったのだ。
捕手を座らせ、全力投球を繰り返している。
続くイニング。ブルペンからマウンドへ直行する。
3回、4回、5回。ブルペン直行は、すべてのイニング後も続いた。杉山は6回まで115球を投げ、失点は初回のみ。計5四死球ながら、最速152キロ、9奪三振の快投だ。
「200球以上は投げました。初回に崩れたので、立て直したかったんです」
自分への怒りのあまり、投げて、投げて、投げ続けて、修正を施したのだ。
当時の2軍監督は、現1軍監督の小久保裕紀だった。
「突然ストライクが入らなくなる“おっかなさ”はある。でも、球自体の手ごたえは杉山自身にもあったんじゃないですか」
そう評価した小久保は、杉山にイニング間のブルペン投球を勧めたわけでも、なんでもなかった。杉山が判断して、杉山が投げまくって、自分で立て直したのだ。無尽蔵のスタミナといえば褒め過ぎか。もはや、規格外のやり方だ。
高校時代の奇想天外エピソード
その奇想天外ぶりは、駿河総合高時代の恩師、監督の望月俊治が明かしてくれたエピソードからも、よく分かるのではないだろうか。
ある試合でのことだった。9回2死、勝利まであと1人。
アウトカウントを確認し合うため、ベンチからは小指と人差し指を立てて「2」を合図する。このサインを、選手同士でも見せ合うのが通例だ。
ところが、マウンド上の杉山だけが違った。

