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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「先発時代、試合中にセルフ投げ込み」ソフトバンクCS突破の立役者“新・守護神”杉山一樹の豪快すぎ素顔「監督、杉山が宇宙と交信しています」
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/10/21 18:30
シーズン31セーブでセーブ王の杉山。CSでもソフトバンクが勝利した3試合すべてに登場した
右手の人差し指を、天に突き上げている。1本足りない。
「えっ?」
「杉山が宇宙と交信しています」
望月の困惑に、傍らにいた部長が苦笑いでつぶやいたという。
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「監督、杉山がまた“宇宙と交信”しています」
テレパシー? 受信のための指? 試合後、望月は杉山に確認したのだという。
「はい、2死なので、あと1人だと思って」
高卒後、プロに行きたがった杉山に「力をつけてから行け」と社会人入りを勧めたのは望月だった。大学へ進学して、再び1年生からの“下積み”になると「アイツはしんどいかもしれない。社会を知ってからの方がいい」と三菱重工広島へ送り出した。
監督の町田公二郎は元広島の右打者。下半身を鍛えるために、ロングティー打撃を繰り返させたことで、実は杉山の打力は格段に上がったのだという。
「アイツは、バッターとしてもすごくなった。高校の時、あれくらい打ってくれたらよかったのに」と望月が振り返ったほどの成長ぶりは、強靭な体が出来上がった証拠。ソフトバンク時代の千賀滉大が「とんでもない素質」と舌を巻いたというそのポテンシャルを生かし切れない日々が続いたが「空振りが取れる」と昨季、監督の小久保裕紀がリリーバーに抜擢すると、50試合登板で4勝。長身から投げ下ろす最速160キロの剛球に、落差の大きなフォークは、力勝負で三振を奪える球を持つという「クローザー」の条件にあてはまる。
守護神のオスナが戦線離脱し、その後釜に座った杉山は、シーズン途中からのストッパーながら、31セーブを挙げ、西武・平良海馬と並んで初のセーブ王。レギュラーシーズンも、今CSでも胴上げ投手の栄誉に輝いた。
1試合に、炎天下で200球を投げてしまう右腕は、連投もへっちゃらだ。
最下位からの巻き返しVに大貢献
今季のソフトバンクには、計算違いの事態が続々と起こった。
昨季9勝のカーター・スチュワート・ジュニアがケガで離脱。柳田悠岐、近藤健介、今宮健太、栗原陵矢と、開幕を担った主力たちも、続々と離脱する。5月1日の時点で最下位、借金7。そのどん底から巻き返してのリーグ連覇、そしてCSファイナル突破を果たした。

