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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
現場で見た! ドジャース大谷翔平「史上最高試合の3本塁打」をNHK解説者・小早川毅彦氏が完全分析「準備の一発、消失の一発、確認の一発だ」
text by

小早川毅彦Takehiko Kobayakawa
photograph byJIJI PRESS
posted2025/10/20 11:00
10奪三振と3本塁打で優勝決定という、大谷翔平「史上最高の試合」の3本目のホームラン。現地解説の小早川氏が見た、爆発のわけは?
「準備」が実ったホームランだった
前日の第3戦の第1打席でも、大谷選手用のオープナーとして登場した左のアーロン・アシュビー投手から、体が開かないように粘って変化球を拾って三塁打を打っていましたから、だんだんそういう工夫が実ってきていたんです。
そういう伏線がちゃんとつながって、キンタナ投手に対してもある程度余裕を持ってストライク、ボールを見極められていました。そしてフルカウントからの目の覚めるような一発が飛び出したんです。もちろん待望のひさびさのホームランでしたが、それこそ大谷選手が急に「目覚めた」というだけではないと思います。リーグチャンピオンシップシリーズに入ってから、今季初めての屋外バッティング練習をしたり、いろいろな準備をして、打席の内容が変化してきていたのが、ここにきて形として表れたと私は見ました。
第2打席では同じキンタナ投手相手に、フルカウントからしっかりと外角を見極めて四球を取りました。1本出たからといって強引なバッティングにならず、こうした出塁を続けられることも大切なんです。
小早川氏の視界から「消失」した一撃
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ドジャースは3対0とリードはしていたものの、3回裏には追加点のチャンスを逃し、4回表には大谷選手もジャクソン・チョリオ選手にツーベースを打たれるピンチを切り抜けるなど、少しだけブルワーズに流れがきかけたような雰囲気で、4回裏の打席を迎えました。ピッチャーは右のチャド・パトリック投手に代わっていました。パトリック投手も、シーズンでは主に先発を務めた実力者です。今度はその彼の得意球、内角の鋭いカットボールを場外まで飛ばしたんですから、もう「すごい」しか言葉が出ませんでした。
ドジャースタジアムの放送席はバックネット側の5階にあるんです。私がそこから見ていると、大歓声を切り裂くようにものすごい打球音がして、打球が上がったのはわかったんです。そこからあっという間にボールが小さくなっていって、まだ落ちていないのに、最後は消えちゃったんですよ、視界から(笑)。どんな大ホームランだって、見ていれば普通、どこに落ちたか目で追うことくらいはできますよ。それが、どこに行ったのかわからなくなっちゃった。

