NumberPREMIER ExBACK NUMBER
「開幕1本目で今年はいけるぞ、と」阪神・佐藤輝明が本塁打&打点の二冠…矢野燿大元監督が語るサトテル覚醒のワケ「一生懸命、振らなくなったよね」
text by

酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byTakuya Sugiyama
posted2025/10/06 17:02
阪神がリーグ優勝を決めた9月7日時点で自己最多の36本塁打。最終的に40本塁打、102打点で二冠に輝いた佐藤輝明
口調は穏やかで、26歳の青年らしく爽やかである一方、かつてのメジャーリーガー、ケン・グリフィーJr.を思い起こさせる装いからは、常軌には収まりきらない、自由で奔放な別の顔も浮かび上がる。この振幅の大きさが「佐藤輝明」という像をあいまいなものにしているのかもしれない。
開幕の1本目で「今年はいけるぞ」
この夜、佐藤はテレビ各局のブースを回るなかで、何度かもっとも印象的な今季の本塁打を問われ、くり返し、答えた。
「開幕の1本目ですね。1打席目に打ったことがなかった。『今年はいけるぞ』と」
ADVERTISEMENT
開眼の予兆は桜のつぼみがほころぶ春先からあった。3月。MLBプレシーズンゲームのドジャース戦でサイ・ヤング賞2度のブレイク・スネルから衝撃のアーチをかっ飛ばすと、広島との開幕戦の1回、シーズン初打席で白球を右翼席に運んだ。佐藤はやがて面白いように右に左に弧を描きはじめた。昨季は16本塁打と伸び悩んだだけに、その覚醒は阪神に勢いをもたらした。
覚醒をもたらしたもの
「一生懸命、振らなくなったよね」
矢野は進化したその打撃を評し、'03、'05年の優勝に導いた名捕手らしくつづける。
「ホームランバッターは変化球にタイミングを外されても、ゆっくり振ってとらえているように見える。テルも一生懸命振らないからボールへのコンタクトが良くなり、『これを振らないのか』と思うようなきわどい球も、いままでより見逃せている」
打席での泰然たる姿を目の当たりにした矢野は思い出すことがある。監督としての2年間で、佐藤に言いつづけてきたことだ。
【続きを読む】サブスク「NumberPREMIER」内【阪神タイガース】「お前には振らない怖さがない」佐藤輝明が近づいた“あるべき姿”とは…矢野燿大が語る教え子の飛躍「急にアイツ、握手を」で、こちらの記事の全文をお読みいただけます。
Number特別増刊号「阪神タイガース 最速優勝の軌跡。」*書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

