テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER
「フレディ…君なら分かるだろ?」“引退会見前に長男と練習”カーショウもフリーマンも涙、大谷翔平とベッツは…テレビに映らないドジャースの友情
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柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph byRonald Martinez/Getty Images
posted2025/09/29 11:05
引退会見でのカーショウ。涙する場面もあった伝説の左腕に、大谷翔平やフリーマンらは……?
練習パートナーは長男チャーリーくんだった。ともにキャッチボールを行い、カーショーが座って捕手役を務め、タナー・スコットが球審を買って出る場面もあった。その後はカーショーが左手にバット、右手にグラブをはめてチャーリー君にノック。
この光景を目に焼き付けて欲しい――。
これから成長しても覚えていて欲しい――。
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グラウンドでの残り少ない期間を全力で子供と一緒に過ごすカーショーの父親としての親心なのだろう。多くの報道陣もその光景をじっと見つめていた。
会見開始…カーショーだけでなくフリーマンも涙
引退会見は17時から球場の会見室で行われた。普段は報道陣が座る記者席の前方2列の椅子は関係者、家族らに開放され、「キケ」ことエンリケ・ヘルナンデス、フレディ・フリーマンらが続々と入ってきた。まだ4人の小さな子供たちを連れていた第5子妊娠中のエレン夫人は遠慮もあって最初、前方に座るのを拒んだが、選手たちに促されるように最前列に座った。
その後、会見場に現れたカーショーは「今は心から納得している。これは正しいタイミングだと思う。やり切った。今が潮時だと思った」と現役引退を決断した理由を説明。冒頭こそ笑顔だったが、家族やチームメイトに感謝の言葉を述べると、涙で言葉を詰まらせた。
「上半身裸で過ごす日曜日のルーティン、飛行機での移動、君たちと過ごしてきた時間を恋しく思う。フレディ(フリーマン)、君にはよく分かると思う」
こう語りかけると、1歳年下の盟友フリーマンは手で顔を覆って涙を流した。
今季のカーショーは左足親指の手術で出遅れたが、5月の復帰後は20試合で10勝2敗、防御率3.53。7月にはメジャー史上20人目の通算3000奪三振を達成した。同一球団での3000奪三振は史上3人目。2008年のデビューから18年間、ドジャース一筋でのプレーは異例だが「本当に最高だった。ここにいられて心から幸せだし、何ひとつ変えたいとは思わなかった。満員のドジャースタジアムでマウンドに立つ、これ以上に素晴らしいことはない」と感慨に浸った。
“因縁の仲”とされた大谷、そしてベッツも…
この引退会見は試合開始直前ということもあって、準備に追われていた大谷やベッツは開始約5分後に入室した。記者室の最後方で立ったまま、じっとその様子を見つめていた。涙で言葉を詰まらせる姿に、大谷は何を思ったのだろうか。何度も交錯した運命を思い返したか。もしかしたら、自分の現役引退する時のことを想像したかもしれない。


