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「ウソついたらすぐバレる」なぜ“地域リーグ勢”が主力のJ3クラブが鹿島と互角の戦いができたか「そこはコンチキショウと」異色の指揮官が語る
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田村修一Shuichi Tamura
photograph byMasashi Hara/Getty Images
posted2025/09/29 17:03
ルヴァン杯鹿島戦、栃木Cのスタメン
「そこは僕も意識しています。誠実であるべきだし、オーセンティック(本物)でないと駄目なので。自分を大きく見せようとしても、選手が30人いたらそんなのすべて見通される……つまりウソをついたらすぐバレます(笑)」
――J3に昇格して、何を新たにやらなければならないと考えましたか。
「一番はプレーの精度を上げることでした。J3では今まで入っていたシュートが入らず、入らなかったシュートを決められる。新戦力を入れることで補える部分と、ボールへの寄せや厳しさなど普段の練習からやっていかねばならないこと、両方を意識しました」
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――近年は田中パウロ淳一やピーター・ウタカ、マテイ・ヨニッチなど、要所に速くて強い選手を入れています。
「強度は大事にしています。選手の質が上がれば自然と上がりますが、スタッフ側も意識しないと選手は楽な方に行ってしまう。両方でいい影響を与えるようにしています」
鹿島に真っ向勝負、掴んだ“通用する手応え”
――鹿島戦(ルヴァン杯1回戦。3月20日。0-1で敗戦)を見ましたが、プレーの強度はほとんど互角でした。
「あの試合の内容は相当良かったと思います」
――失点はセットプレーでしたし、カウンターアタックもフィニッシュをもう少し冷静に打てれば。
「まったくチャンスがなかったわけではなく、それなりにチャンスは……」
――慌ててしまうのは経験の問題ですが、大きな自信になったのではないですか。
「そう思います。相手は当時J1首位の鹿島ですから。でもだからこそチャレンジできたのかもしれない。失うものはないというのは、言わなくともわかっているわけですから。ただそれを差し引いても、いいパフォーマンスだったなと思います。GK以外はリーグ戦からスタメンを全員代えました。鹿島は半分ぐらい出ていたのに、そういった相手に思いきりやれば意外と通用するんだというのは、いい成功体験でした」
――天皇杯の川崎フロンターレ戦(2023年6月7日、川崎3-1栃木)と比べても、強度もスピードも精度も上がっていた。
「川崎戦からは約2年がたっていて、全然違います。今はJ1とも、それなりの勝負で張り合えるようになったと思います。練習の質、強度も間違いなく向上し、ミスも減りました。レベルが上がったなというのは肌感覚としてあります」

