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「棋力は誰にでもつく」「勝ちパターンを確立できた」なぜ“将棋の鬼”は藤井聡太に敗れ続けて強くなるのか「私はそこしか見ていないので」
posted2025/09/27 11:05
「棋力は誰でもつく」「勝ちパターンを確立できた」……努力の天才・永瀬拓矢が強くなろうとする根源的な理由とは
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大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph by
Shintaro Okawa
今後、研究会の数を減らそうかどうか悩んでいます
「明日はないですね。練習将棋は休みます」
私はいつも永瀬の取材の最後には、翌日の研究会について質問してきた。「将棋の鬼」の永瀬は、タイトル戦の翌日に限らず、出発日でさえも平気で研究会の予定を詰め込んでいたものである。
それが最近、永瀬にこの質問をしても「ないです」という返事が増えた。7月に理由を尋ねたところ、驚きの言葉が返ってきた。
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「正直、今後、研究会の数を減らそうかどうか悩んでいます。意味のある感想戦をできる人が少ないと感じています。基本的な変化や評価値を不勉強で知らなかったり、読み筋について質問しても大して読んでいなかったりすることが多いんです。藤井さんはまずそういうことがないので」
このセリフを吐ける棋士は永瀬しかいないのではないか。現状、この悩みにはどういう結論を出したのだろう。
「一定数はやりつつ、増やすことなくって感じです。勉強の課題が山積みになっているので、人と指すばかりの時期は過ぎたのかなという感じがしています」
一人でAIに向かう時間が確実に増えているのだ。
私は研究会をやりすぎていたために…
大事なことを聞き忘れていた。今シリーズを経たうえで課題が浮かび上がったことはわかったが、収穫面はどうなのだろう。すると意外なことに、この研究会についての話とつながったのである。
「藤井さんの勝ちパターンの話をしましたが、自分の勝ちパターンも確立できたような気がします。それは収穫ですね」
永瀬が連勝した第4、5局のことだ。これらの将棋では永瀬が序盤からよい展開を作っていたことを思い出す。角換わりを後手で受けた第4局では、自陣の9二から角を打った手に藤井も感心していた。

