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「胸が痛いです」藤井聡太が19、23歳で経験“タイトル戦トラブル”将棋界も無関係ではない大災害「東日本大震災時の立会人だった」元A級棋士が語る

posted2025/10/01 06:00

 
「胸が痛いです」藤井聡太が19、23歳で経験“タイトル戦トラブル”将棋界も無関係ではない大災害「東日本大震災時の立会人だった」元A級棋士が語る<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

藤井聡太七冠が6連覇を達成した王位戦では、台風15号による対局場変更というアクシデントが起きた

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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 伊藤園お~いお茶杯第66期王位戦(藤井聡太王位-永瀬拓矢九段)七番勝負第6局(9月9、10日)は、台風15号の影響で静岡県牧之原市での対局が間際に取りやめとなり、東京・千駄ヶ谷の新将棋会館で行われた。藤井が王位6連覇を達成した第6局の将棋と当日の模様、過去のタイトル戦の対局で起きたトラブルについて、順位戦A級在籍経験のある田丸昇九段が解説する。【棋士の肩書、年齢はいずれも当時。段位などは初出以外省略】

台風で開催地・静岡に被害→東京の新将棋会館に

 藤井聡太王位(竜王・名人・王座・棋聖・棋王・王将を合わせて七冠=23)に永瀬拓矢九段(33)が挑戦した第66期王位戦七番勝負は、藤井が3連勝の後に永瀬が2連勝して巻き返した。9月9、10日に行われた第6局は、大逆転ドラマの前兆になるのかと注目された。対局場は静岡県牧之原市「平田寺」。

 ところが、近年相次ぐ異常気象を受けての悪天候で、思わぬ事態となった。

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 9月5日に和歌山県に再上陸した台風15号は、太平洋側を東進して沿岸部に甚大な被害を及ぼした。静岡県には線状降水帯が発生し、牧之原市の辺りは歴代最強の竜巻が起きて数多くの住宅が倒壊した。対局場の平田寺は無事だったが、牧之原市は復旧に専念したいとして、王位戦の開催の辞退を主催者に申し出た。第6局の日程は間際で、代替えの対局場を確保するのは難しい。そこで、東京・千駄ヶ谷の新将棋会館に変更された。今年1月に対局場として運用されて以来、タイトル戦が行われるのは初めてのことだ。

 王位戦第6局は新将棋会館の特別対局室で行われた。宿泊用の部屋はないので、対局者らは近くのホテルに泊まったようだ。食事は隣接するカフェ、地元の洋食店、寿司店などから出前を取った。通常のタイトル戦の対局とは様子が少し違うが、盤の前に座れば集中することに変わりはない。

6連覇を果たした藤井が語ったこと

 七番勝負のタイトル戦で、一方が3連勝した後に3連敗したケースは、過去80年で5例しかない。そのうち2008年の竜王戦(渡辺明竜王-羽生善治名人)、09年の王位戦(深浦康市王位-木村一基八段)で、渡辺と深浦が大逆転防衛を果たした。

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