「AI評価値が30％→45％→73％→95％」藤井聡太23歳の逆転劇…“天才に再び敗れた天才”永瀬拓矢32歳との感想戦は「AI候補手に関心がなく」

一時は30％に下がった藤井の期待勝率が73％に

　見慣れた光景が広がっていた。

　伊藤園お～いお茶杯第66期王位戦第6局は静岡県牧之原市で行われる予定だったが、台風15号による竜巻の被害で開催を辞退。急遽、対局場が東京・将棋会館に変更されたのである。

　新会館で2日制のタイトル戦が行われるのは本局が初めてとなる。慣れ親しんだ場所だけに対局はスムーズに進んだようだ。牧之原市は大歓迎ムードだったと聞くし、心のこもった将棋めしやおやつを見られないのは残念の一言だった。

©日本将棋連盟

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　私が新会館の控室に到着したのは、対局2日目の夕方だった。初日も見どころたっぷりの攻防が繰り広げられていたが、ここからが勝敗に直結する部分である。115手目に飛車交換が行われた辺りで、日本将棋連盟モバイル中継の期待勝率は永瀬の微差リードを示していたが、優勢とまでは言えない。

　数手進み、藤井が5八の玉を6七に上がると期待勝率が30％に下がった。永瀬が優勢になったと言える数字だ。しかし藤井玉にどう迫ればいいのか。永瀬が残り43分から11分をつぎ込んで持ち駒の飛車を7九の地点に打ちつけた。厳しそうに映るが、藤井の期待勝率が30％から45％に回復したのだ。藤井が竜を作り、永瀬が3七の馬で4七の角を取ると藤井の期待勝率が一気に73％まで上昇した。

　AI（人工知能）を信じれば、永瀬の連続疑問手ということになる。

81％→95％でも容易くはないだろうに…

　すると控室のどこからか、「宿をキャンセルしようかな」と聞こえた。

　最終の第7局が9月25、26日に神奈川県鶴巻温泉の名宿「陣屋」で控えているが、藤井が本局で勝つとシリーズが決着する。すると「さすがに早いでしょう」と誰かが苦笑しながら応えた。まるで永瀬がたしなめたみたいだな――と妄想していると、藤井がその馬を金で取った瞬間、形勢の針はまた互角に戻ったのだ。一手ごとに形勢が入れ替わる大熱戦で、どうなっているのかわけがわからない。

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