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引退のロッテ・美馬学「人生で一番重い“ありがとう”をもらった」2013年楽天V…星野仙一の“鬼の形相”が崩れた「いま“闘将”に伝えたいこと」
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梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byNaoya Sanuki
posted2025/09/26 11:08
引退を決めた美馬学。楽天時代の恩師・星野仙一監督との思い出は尽きない
「ずっと走ってろ」足の裏の皮がむけて…
厳しく指導を受けた思い出は数知れない。主に中継ぎとして登板していた1年目のことだ。1イニング目は0に抑えたものの2イニング目につかまり、打ち込まれた。試合後、案の定厳しい言葉が飛んだ。
「もう(試合前の)集合にも入らなくていいから、ずっと走ってろ」
次の試合では、仲間たちが練習をしている姿を横目に、外野のポール間を2時間以上、黙々と走った。
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「本当に練習の最初から最後まで。誰も声を掛けられるような雰囲気ではなかったと思う。だから誰からも話しかけられなかった。もういいぞとコーチに言われるまで。足の裏の皮がむけた(笑)」
闘将が時折見せた優しい顔
そんな星野監督だったが、時折見せる優しい側面が美馬の心を刺激した。先発投手として負けが続いている時、普段はブルペンに姿を見せない指揮官が登板2日前のピッチング練習にフラッと現れた。美馬の投じるボールを何球かじっと見つめると「なんでこんないい球をもっているのに打たれるのかなあ」と呟いて、困ったとばかりに頭をかくそぶりを見せながら、その場を去っていった。「そんなこと思ってくれているのかあと嬉しくなったのを覚えています」と懐かしむ。
その闘将を、あの日は仙台の夜空に向かって胴上げした。2011年の震災の傷が残る東北に勇気を届けた。美馬は日本シリーズ2勝の大活躍でシリーズMVPに輝いた。忘れられない一年だ。
「いい時って、すべてがうまくいく。間合いもピッタリと合う。ゆっくり投げたらこうなるなあとかそういう感覚も研ぎ澄まされていた。あの日本シリーズは、ボクの感覚とバッテリーを組んだ嶋さん(基宏、現スワローズヘッドコーチ)の感覚が研ぎ澄まされていた」


