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引退のロッテ・美馬学「人生で一番重い“ありがとう”をもらった」2013年楽天V…星野仙一の“鬼の形相”が崩れた「いま“闘将”に伝えたいこと」

posted2025/09/26 11:08

 
引退のロッテ・美馬学「人生で一番重い“ありがとう”をもらった」2013年楽天V…星野仙一の“鬼の形相”が崩れた「いま“闘将”に伝えたいこと」<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

引退を決めた美馬学。楽天時代の恩師・星野仙一監督との思い出は尽きない

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梶原紀章(千葉ロッテ広報)

梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara

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Naoya Sanuki

 その瞬間を思い出すだけで、今でも鳥肌が立つような特別な感覚に陥る。今シーズン限りで現役引退を決めたマリーンズの美馬学投手には、自身のプロ15年間の歩みを振り返る時に必ず思い出す場面がある。

 イーグルス在籍時代の2013年11月3日。日本一を決めた仙台でのジャイアンツとの日本シリーズ第7戦だ。勝ったチームが日本一となる決戦の日はコートが必要なほどの肌寒さだった。1安打無失点で6回を投げ切り、ベンチに戻ると故・星野仙一監督が美馬の元に近寄ってきた。バッと右手を掴まれた。

「ありがとう!」

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 右手と右手で力強く握手を交わすと全身に鳥肌が立った。

「人生で一番重い『ありがとう』をもらいました。今でも思い出しただけでザワッとします。その瞬間、『ああ、オレの仕事は終わった』と一気に力が抜けたのを覚えています」

 美馬はそう振り返り、笑みを浮かべた。

「逃げるな」叩き込まれた戦う姿勢

 勝負に徹し、戦いに燃え、誰よりも勝利を求める。ゆえに闘将と呼ばれた星野監督。美馬がプロ1年目の2011年から何度も教え込まれたのは「逃げるな」、「戦う姿勢を常に持て」というプロとしてのあり方だった。だからその闘将から、これほど優しい表情で温かい言葉をかけてもらうのはプロ入り後、初めてのことだった。

「ビックリしました。ナイスピッチングと言われたこともそれまで記憶になかった。それが星野さん流。9回1失点で完投勝利した時でも『今日は完封しないとダメな試合なんだ!』と怒られたことがありました。

 大量リードの完封ペースで最後、ソロホームランを打たれてすぐに替えられたこともありました。それだけにベンチに戻って監督の方から寄ってきていただいて『ありがとう』と言われた時は本当にザワザワッと震えました」

【次ページ】 「ずっと走ってろ」足の裏の皮がむけて…

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