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井上尚弥の“残酷なアッパー”で顔がグシャリ…「敗者アフマダリエフの絶望」を世界的カメラマンは見た「自信を失って…“もうダメだ”と悟っていた」 

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福田直樹

福田直樹Naoki Fukuda

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photograph byNaoki Fukuda

posted2025/09/20 11:13

井上尚弥の“残酷なアッパー”で顔がグシャリ…「敗者アフマダリエフの絶望」を世界的カメラマンは見た「自信を失って…“もうダメだ”と悟っていた」<Number Web> photograph by Naoki Fukuda

井上尚弥に“完封”された挑戦者ムロジョン・アフマダリエフ。試合が進むにつれて、その顔から自信が失われていった

“弱いわけがない”アフマダリエフを圧倒「まさにアート」

 アフマダリエフ選手が弱いわけがないですし、スーパーバンタム級で一番の強敵という戦前の見立ては間違っていないと思います。井上選手の強打をかなりもらっても耐えられるくらい、体力的にタフでもありました。そんなボクサーの気持ちを「どうしようもない」と萎えさせてしまった井上選手の技術がただただすごかった。

 勝ちに徹していながら、いわゆる「塩漬け」でもない。終盤に至ってなおリズムが速くなっていくスタミナも驚異的でした。自分の気持ちも試合の展開も最後まで完璧にコントロールして、ほぼ何もさせなかった。撮影しながら、10ラウンドくらいには「よほどのことがないかぎり、トラブルは起きないだろう」と確信しました。試合前に「今回はちょっと危ないんじゃないか」と言われていたのが嘘のようです。

 これまでKOでファンを魅了してきたボクサーが、圧倒的なテクニックで「技術戦もいいな」と思わせた。まさにアートのように緻密なボクシング。判定勝ちでも文句なしに面白かったですし、「いいものを見た」という満足感がありました。日本のボクシングのKO主義をリードしてきた井上選手がボクシングの楽しみ方をさらに広げたという点において、とても意義深い試合だったと思います。カメラマンとしても、ものすごく集中力が鍛えられました。本当に貴重な経験でしたね。

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 スティーブン・フルトン戦以降の5試合は力で倒しにいくボクシングをしていた井上選手が、32歳になって再び精巧なボクシングを、それもこれまで以上に高い完成度で見せたというのはすごいことです。後期のフロイド・メイウェザーのような「負けないボクシング」でありながら、同時にスリリングでもある。相手によっては打ち合いのモードに戻すかもしれませんが、このスタイルならフェザー級でもまったく問題ないのではないかと感じました。

【次ページ】 「中谷潤人も完成度を高めてくる」世紀の一戦を展望

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