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井上尚弥の“エグい左”で「脳がグラッ」敗者アフマダリエフ「じつは5ラウンドの一撃で“異変”」世界的カメラマンがとらえた“心が折れる”決定的瞬間

posted2025/09/20 11:12

 
井上尚弥の“エグい左”で「脳がグラッ」敗者アフマダリエフ「じつは5ラウンドの一撃で“異変”」世界的カメラマンがとらえた“心が折れる”決定的瞬間<Number Web> photograph by Naoki Fukuda

井上尚弥はムロジョン・アフマダリエフをスピードとテクニックで圧倒。リングサイドで撮影した福田直樹氏が語る、「敗者の心が折れた」瞬間とは

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福田直樹

福田直樹Naoki Fukuda

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Naoki Fukuda

スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥が、「最大の強敵」と評した挑戦者ムロジョン・アフマダリエフを圧倒した9月14日の防衛戦。リングサイドでこの試合を撮影した“パンチを予見するカメラマン”は何を感じたのか。「あそこでアフマダリエフの心が折れたのでは」――全米ボクシング記者協会の最優秀写真賞を4度受賞した福田直樹氏が、衝撃の一戦を振り返る。(全2回の1回目/後編へ)

カメラマンが驚いた“アフマダリエフの肉体”

 来日したアフマダリエフ選手をオフィシャルのビジュアル撮影で目にしたとき、率直に「これは頑丈だな」という印象を受けました。思っていたよりも顔が大きくて、首も太い。また、公開練習ではあまり本気のパンチを見せていませんでした。陣営側にちょっと神経質な感じがあったのも、待ちに待った井上戦への思い入れの強さゆえでしょう。

 映像で見るかぎり、アフマダリエフ選手のパンチの質はキレというよりも、重さを感じさせるものでした。ドスンと当たって、押していくようなイメージです。そして大きく振り回すわりには、実際に倒すパンチはショートでインサイドから入るものが多い。ジャブも非常に強い。井上選手とは速さがだいぶ違うのでそう簡単には当たらないだろうなと思いつつも、アマチュアのころから当てる技術を磨き上げてきているボクサーですからね。モンスターといえども、まったく油断できない相手だなと感じていました。

 対する井上選手の公開練習は、すごく落ち着いて見えました。会見でもいい感じに気合が入っているけれど、気負いすぎてはいない。表情からもそれが伝わってきました。

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 今回、井上選手はマーロン・タパレスのほか、帝拳ジムの有力選手たちとスパーリングを重ねてきましたよね。テクニックのある藤田健児選手、パワータイプの中野幹人選手など、それぞれ特徴の異なる選手たちと「丁寧なボクシング」をするための練習を入念に行ってきたことが、試合にも存分に生かされていたと思います。

 ただ、前日計量のアフマダリエフの体には驚きました。表情も自信にあふれていて、精神的な乱れもない。井上選手と並んでも上半身の厚みはすごかった。本当にゴツくて、タフそうだなと。そのぶん、下半身は井上選手のほうがしっかりしている印象でした。

【次ページ】 アフマダリエフは「井上尚弥」を学習できなかった

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