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井上尚弥の“残酷なアッパー”で顔がグシャリ…「敗者アフマダリエフの絶望」を世界的カメラマンは見た「自信を失って…“もうダメだ”と悟っていた」

posted2025/09/20 11:13

 
井上尚弥の“残酷なアッパー”で顔がグシャリ…「敗者アフマダリエフの絶望」を世界的カメラマンは見た「自信を失って…“もうダメだ”と悟っていた」<Number Web> photograph by Naoki Fukuda

井上尚弥に“完封”された挑戦者ムロジョン・アフマダリエフ。試合が進むにつれて、その顔から自信が失われていった

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福田直樹

福田直樹Naoki Fukuda

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Naoki Fukuda

スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥が、「最大の強敵」と評した挑戦者ムロジョン・アフマダリエフを圧倒した9月14日の防衛戦。リングサイドでこの試合を撮影した“パンチを予見するカメラマン”は何を感じたのか。「アフマダリエフを絶望させたアッパー」の決定的瞬間をとらえた福田直樹氏に話を聞いた。(全2回の2回目/前編へ)

「これはもうダメだ」敗者アフマダリエフの“絶望”

 撮影している側としては、7ラウンドくらいから井上選手に余裕が出てきたなと感じました。あれだけ足を使っているのに、運動量が落ちないどころか加速していく。自家発電でどんどんエネルギーが出てくるみたいに、中盤から終盤にかけて、さらに差が広がっていった印象です。

 ボディや左ストレート、偶発的なカウンターも含めて、アフマダリエフ選手のパンチもまったく当たっていないわけではなかった。ただ、いずれも単発でした。強いパンチではあるけれど、まとめてもらわないかぎりトラブルは起きない。モンスター攻略のためにはもうひとつ、ふたつ、こじ開けなければいけない扉があるのに、それが開く気配がない。井上選手の絶妙なポジショニングとスピードに、アフマダリエフ選手は最後まで翻弄されていました。

 9ラウンド、ロープを背負った井上選手がショートの右アッパーをヒットさせた場面は圧巻でしたね。もう試合も大詰めですから、明らかにポイントで劣勢のアフマダリエフ選手としては、何かをやらなければいけない。そしてロープに詰めていこうとしたときに、あの残酷なアッパーが……。僕のポジションはアングル的にはあまりよくなかったのですが、印象的な一枚を撮ることができました。

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 距離を詰めてもいけないし、パンチを打ってもそれ以上に返される。アフマダリエフ選手としては、次に何をしていいのかわからない。もはや手詰まり感があったのではないでしょうか。ラウンド後のインターバル中、ちらっと青コーナーを見たときに、完全に自信を失ったような表情をしていました。アフマダリエフ選手も間違いなく勝つ気で来日したはずですし、とんでもなく高いモチベーションでリングに上がっていた。でも試合終盤には「これはもうダメだ」と内心悟ってしまったかのような、そんな顔つきになっていました。

【次ページ】 “弱いわけがない”アフマダリエフを圧倒「まさにアート」

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