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「イノウエをダウンさせるプランがある」敗者アフマダリエフ、“天才戦術家”の誤算…日本人記者が井上尚弥戦2日前に聞いた「カルデナス戦でイノウエを学んだ」
posted2025/09/20 17:03
9月14日、井上尚弥vsアフマダリエフ。敗者が思い描いていた“番狂わせ”プランとは…
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Naoki Fukuda
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アフマダリエフ陣営に注目が集まった理由の一つは、ジョエル・ディアスの存在だった。「番狂わせの申し子」として名高い戦術家である。13年前、全盛期のマニー・パッキャオをティモシー・ブラッドリーが破った試合の立役者こそジョエルだった。
ジョエルは井上を知っていた。なぜなら、前回の井上の対戦相手、ラモン・カルデナスを指導しているのが、他ならぬジョエルだからだ。井上の圧勝が予想される中、カルデナスは2回に左フックで想定外のダウンを奪うなど、善戦を繰り広げた。
「イノウエ撃破プラン」
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アフマダリエフ戦2日前。記者会見場にジョエルの姿があった。ひとりぽつんと座っていたジョエルに質問する機会を得た。
「アフマダリエフ陣営として井上を倒す自信はありますか?」
「あるよ。カルデナス戦で多くを学んだからね」とジョエルは自信を持って答えた。「MJ(アフマダリエフ)は違う。オリンピックにも出て、アマチュアで国際戦を300戦以上こなしてきた。技術、フットワーク、判断力、パワー……どれもラモンより上だ」
「イノウエはとにかくパンチの数が多い」とジョエルは分析を続けた。「カルデナスは一撃で倒すことに意識が向きすぎていたし、試合中にアジャストする経験が足りていなかった。MJにはそれができる」
「MJは両手どちらも強烈だよ」とジョエルは井上をダウンさせる計画について語った。「パンチが入る角度次第。加えて、ラモンは一点に留まってしまうことがあったが、MJは一つの場所に留まらない。常に動きながら相手のパンチを空振りさせて、カウンターを放てる」
井上の戦略についても分析していた。「イノウエは攻めてくるか、安全運転でくるか。ホームで戦うわけだから、おそらく自分の力をわかりやすく示したいと思うはずだ。その点、MJを捕らえるべく、積極的にくると見ている」
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しかし試合が終わった今、あらためて聞き返すとジョエルが唯一繰り返した言葉が致命的な欠陥を孕んでいたことがわかる。「私はカルデナス戦で多くを学んだ」。教訓を活かす過程に落とし穴があったとは、誰が予想できただろう。
そして試合3時間後、私はアフマダリエフ陣営が宿泊するホテルを訪れていた――。
本編では、密着記者が直撃した“敗戦直後のアフマダリエフの本音”を綴る。
<続く>
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この文章の本編は、以下のリンクからお読みいただけます。
