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渋野日向子が最年長「みんなレベル高い」米女子ゴルフ勢力図に異変…なぜ日本人が勝てる?「そりゃ挑戦するよなあ」上田桃子も納得“若手女子プロの新常識” 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byDavid Cannon/Getty Images

posted2025/09/21 06:02

渋野日向子が最年長「みんなレベル高い」米女子ゴルフ勢力図に異変…なぜ日本人が勝てる?「そりゃ挑戦するよなあ」上田桃子も納得“若手女子プロの新常識”<Number Web> photograph by David Cannon/Getty Images

AIG女子オープン(全英女子)を制して日本人史上6人目のメジャー王者になった山下美夢有。古江彩佳ら日本勢がみんなで祝福した

 世界最高峰の米女子ツアーを今季、力強く牽引するのが彼女たちである。9月にオハイオ州で行われたクローガー・クイーンシティ選手権までの24試合で、最も多く優勝しているのが通算5勝の日本勢。前述の通り、うち2勝がメジャーだった。

 そもそも1シーズンに13人もの日本人選手がLPGAを主戦場とした年はこれまでになかった。毎年、国内ツアーのトップ選手が、大挙して海を渡るようになったのは最近のこと。2017年に畑岡が日本ツアーを経由せずに飛び込んだ後、21年12月に渋野と古江が最終予選会を突破してからは毎年度末、複数人が扉をたたいている。

門戸を開いた畑岡、封印を解いた渋野

 今ある米女子ツアーの姿を眺め、「やっぱり、奈紗ちゃんがずっとアメリカで頑張ってきて9年目。すげえなあ……って思うんです」と言う渋野はやはり、その畑岡が築いてきたものとは別のきっかけを生んだ人に違いない。

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 樋口久子が1977年に全米女子プロ選手権を制してから、次に日本人が女子メジャーで優勝するまでには実に42年かかった。だが、2019年全英女子オープンで渋野がその封印を解いてからは、わずか6年の間に新たに4人のチャンピオンが誕生。そのうち笹生は全米女子オープンで2勝した。

 日米で活躍し、昨季限りで第一線を退いた上田桃子は、最近の傾向を「そりゃあ挑戦するよなと感じますし、素晴らしいことだと思います」と頷く。自身が米国に身を置いた2010年前後は、宮里藍、宮里美香らの固定メンバーからの追加や入れ替えが少なかった。そんな“海外組”と“国内組”との境界線が色濃かった時代は過ぎ、今では多くの選手が視線を国外へと向ける。

「竹田さんは去年、日本ツアーで8勝もした。でもその8試合以外では、彼女に(成績で)勝っている選手はいっぱいいるでしょう。それで竹田さんがアメリカで活躍すると、一緒にプレーした選手は(自分の)可能性を感じる。他にも自分よりも身長が低い古江さん(153センチ)が戦えるとか、頑張れば手が届きそうな差を、実際に日本のトップ選手が埋めてくれている。可能性を感じられることは本当に大きいことで、それだけで頑張れるんです」

 毎シーズン35試合近く行われる日本の女子ツアーに参加すること自体が、いまや世界との距離を知る術として有効という見方もできるだろう。実際のところ、人気面で男子スポーツに劣る米女子ゴルフの会場では、日常的に多くのギャラリーの前でプレーする機会が少ない。周囲の景色が突然変わるのは優勝争いに飛び込んだ時で、日本人選手はそんな状況でこそ、大観衆に囲まれた国内ツアー時代のアドバンテージも発揮しているようにさえ思える。

【次ページ】 渋野も驚き「みんなレベルが高い」

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