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柳田将洋と石川祐希に「ふざけんな」男子バレー世代交代に揺れた“職人アタッカー”が涙を流して声を荒げた瞬間…記者から飛んだ残酷な質問
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田中夕子Yuko Tanaka
photograph byKoki Nagahama/Getty Images
posted2025/09/22 11:03
2015年ワールドカップ、当時19歳の石川祐希をフォローする米山裕太
「俺、残れない可能性あると思うわ。ここまでずっとお前らと一緒にやってきたけど、オリンピック目指せないかもしれない。そしたら、すまんな」
永野と清水だけではない。福澤達哉や山村宏太。「勝てない」と揶揄された暗い時代を歯を食いしばって戦ってきた選手たちは、互いにとってかけがえのない存在だった。
長く続く合宿中、休日の前夜は食事に繰り出し、悔しさやもどかしさを分かち合った。思いの丈を吐き出し、最後は決まってカラオケでケツメイシの『仲間』を歌う。いい具合に酔いがまわって、誰一人ちゃんと歌うことはできなかったけれど、肩を組んで泣きながら歌った。そんな同志には、自らの思いを伝え、そして託したかった。
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代表生き残りをかけた合宿の最後の練習試合。「人生をかけて、死ぬ気でやった」というフランス戦を終えた後、南部正司監督が発した言葉を米山は今も忘れられずにいる。
「『米山を見てみろ。背中から火が出てメラメラしてるぞ』って。それぐらいみんな一生懸命やれという意味だったと思うんですけど、僕はその言葉が嬉しかった。日本代表に入ってからずっとオリンピックを目指して、ここに残って勝つためにエネルギーを注いできたので」
バレーボール人生をかけてまでつかんだ日本代表の座。盟友たちと五輪のコートに立つ。そんな鬼気迫る思いがあったから、独特の緊張感に飲み込まれる後輩たちの姿が歯痒く映った。
「俺たちには“東京”なんてない」
初戦のベネズエラには3対1で逆転勝ちを収めたものの、翌日の中国戦でストレート負け。続くポーランド、イランにも敗れ、4戦を終え1勝3敗となった。リオ五輪出場に向けてまさに崖っぷちに立たされた。
米山の感情が爆発したのは、そんな時だった。敗戦後のロッカールーム。ある関係者が「もう終わりだ」と諦めの言葉を漏らした。それをどうしても受け入れることができなかった米山は、初めて全員の前で声を荒らげた。
「まだ終わってねぇよ。俺たちが目指しているのはそこじゃないし、俺たちには東京(五輪)なんてない。まだ俺らに試合は残ってるんだよ」
言葉の主が本心で発したものではないことは理解している。でも、耐えられなかった。悔しくて、悔しくて、シャワーを浴びながら涙が止まらなかった。


