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「勉強、故障と理由をつけて休もうとする」芝浦工大チームを箱根駅伝に導けるか!? 徳本一善新監督の挑戦「改善できない選手にはやめろ、と言います」
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佐藤俊Shun Sato
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2025/09/18 11:07
箱根駅伝出場経験のない学生たちに命じた練習内容から、自身が考える学生スポーツの意義までを徳本一善新監督が語った
どこかでやめる、やめないを選択するのが学生スポーツ
「やめろ」とは、監督が一番言いにくい言葉だろう。
だが、その選手の人生を考えた時、何をやっていいのか分からないまま、辛いことを無理してやることに意味はない。そこでまず考える時間を与えて、自分で判断させ、やめる判断をしたなら次のステップに移り、自分のやりたいことに集中した方がいい。これは、徳本の監督としての最後の優しさのように感じる。
「前任校で思ったのは、ひとりやめると他の学生も考えるんですよ。俺は本当にここにいるべきなのか。そういう風に考える子が増えてくるのは、すごくいいことだと思うんです。今の自分の能力、立ち位置からここに残って、上の選手を倒して箱根に出ないといけない。最後までやり切ると覚悟を決めた選手は残るし、厳しいと思う選手はやめていく。
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ただ自分たちも、無理だから終わりじゃなくて、こうやれば残れるという道筋は提示しているんです。俺は、ただ時間を費やすだけで4年間過ごすくらいなら、どこかでやめる、やめないの選択を決めるのが、学生スポーツなのかなと思っています」
やめていく学生への態度に見えた“勘違い”
徳本監督は、やめていく学生を見送った際、一部の選手が泣いているのを見た。「なぜ、泣いているのか」と聞くと、学生たちは「4年間やって、全員で卒業しようと言っていたんで」と言った。徳本が「お前ら、それは勘違いしているよ。あいつがやめたのはお前らのせいかもしれない」と言うと、学生たちは「なんでですか」と口をとがらせていた。
徳本は、学生にこう伝えた。
「ただ単に臭いものに蓋をしていただけじゃないのか。あいつがルールを破ったりしていたのを、みんなで卒業したいから許していたわけでしょ。おまえ、それ違うぞって、どうして言ってやれなかったのか。俺たち一緒に乗り越えていくぞって、どうしてとどまらせることができなかったのか。4年間頑張って卒業するということが、ルール破りを許してのことなら、お前ら大きな勘違いだよ」
徳本には、そこに「自分さえ……」という考えが透けて見える気がした。心配しているようで、実はうわべだけの薄っぺらいものを感じた。誰かのために怒れる組織には信頼という絆が1本通っているが、チームはまだそこまで成長していない。
42名の選手でスタートしたチームから、夏までに7名が退部した。だが、70%の選手の目の色が変わった。
〈全3回の2回目/3回目につづく〉

