箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「勉強、故障と理由をつけて休もうとする」芝浦工大チームを箱根駅伝に導けるか!? 徳本一善新監督の挑戦「改善できない選手にはやめろ、と言います」
text by

佐藤俊Shun Sato
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2025/09/18 11:07
箱根駅伝出場経験のない学生たちに命じた練習内容から、自身が考える学生スポーツの意義までを徳本一善新監督が語った
追い込まれたら勉強はできるんだから
「故障した選手には、『走ること以外、フィジカルやバイク、プールなどすべてのトレーニングができるだろう』と、かなりハードで厳しいメニューを与えました。さらに『練習で走っている選手よりも先に部屋に入ることは許さん、一番最後に部屋に戻れ』と言ったんです。
そうしたら、みんな走るようになったんです。選手の行動を見たらわかるんです。こんなにキツいリハビリメニューなんかやりたくない、走った方がマシだって思ったんだと思いますよ。7月には故障者は3人だけになりました(苦笑)。俺らはモチベーションを変えることはできないんです。でも、やるキッカケを与えることはできる。だから、本人がやめるというまでは、あの手この手でアクションを起こして気持ちを前向きにできるようにしています。
彼らを1カ月観察したときに、こいつらは追い込めばできると思ったんです。理由は、勉強のモチベーションがすごいんです。追い込まれた時の彼らは、リスペクトできるぐらい頑張るんです。だから走ることもできるはずだって」
ADVERTISEMENT
だが、学生もしたたかだ。監督が笛を吹けど、踊るフリをしながら冷静にトップの言動を見ている。裏でコソコソ監督批判をしたり、できるだけラクをしたいのか、「選手は、みんな大変なんですよ」と揺さぶりをかけてくる学生もいた。
「そこで大事なのは、目標からブレないこと。チーム力を上げて箱根駅伝を目指すという目標がある以上、俺たちがやっていることは間違っていない。そこがブレた瞬間、学生たちが隙を突いてくるんです」
まずは1500m、3000mのレースから
指導ではなく、学生と神経戦を連日、繰り広げているようにも見える。だが、そういう選手がいるチームだけに、競技レベルも推して知るべしだ。
多くが年に3、4回程度しかレースに出ておらず、自己ベストの更新もほとんどなかった。徳本監督はまず、春のトラックシーズンに出場するのは、1500mと3000mのレースに限定した。
「そうしたのは、選手に5000mや10000mを走るだけの力がなかったからです。あとは、試合に出たことない選手ばっかりだったので。1500mとか3000mは一番手頃で走りやすいので、まずはそこからスタートしようと。そこで何回か走って、自分に足りないものを見つけなさいという感じでした」

