草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER

「勝ってこそ意味がある」中日の“藤浪対策”「先発オーダーに左打者8人」より波紋を呼んだ井上一樹監督の“ある采配”〈因縁試合の舞台裏〉 

text by

小西斗真

小西斗真Toma Konishi

PROFILE

photograph byJIJI PRESS

posted2025/09/03 11:15

「勝ってこそ意味がある」中日の“藤浪対策”「先発オーダーに左打者8人」より波紋を呼んだ井上一樹監督の“ある采配”〈因縁試合の舞台裏〉<Number Web> photograph by JIJI PRESS

ピンチに中日打線を抑えて吠える藤浪晋太郎

 リスクとは右打者の死球による負傷という意味だ。藤浪は100マイル近い球速をもち、同時に右打者の肩から上にかけてすっぽ抜けることがある。NPB通算では左打者に14死球に対して、右にはぴったり3倍の42も当てている。単なる死球ではなく、骨折も含めた「リスク」。コーチからは「われわれには選手を守る義務がある」「当たらなくても無意識にかかと体重になってしまい、打撃を崩す恐れもある」という言葉も聞かれた。

「藤浪も左打者なら腕を振れる」は本当か

 それに対して否定的な意見はネットへの書き込みだけでなく、野球解説者、つまりプロからも数多く出た。

「プロだから勝利のためにベストを尽くすべし」「藤浪だって当てたくない。左打者だと当ててしまう不安が少なくなるから、気持ちよく腕を振れるんじゃないか」「休みたくないと申し出ない右打者も情けない」等々。

ADVERTISEMENT

 井上監督は「勝たなくていい」とは一言も口にしていないし、そんなことは思っていないはずだ。藤浪が左の方が投げやすいと考えている可能性はあるが、阪神時代も含めたNPB通算の被打率は、右よりも左の方が6分も高い。そのデータから推測できるのは、藤浪が右打者に投げづらいと考えているとしても、右打者は藤浪に対してもっと打ちづらいと考えているということだ。故障というリスクを差し引いても、左打者を並べたことが敗戦に直結したとは言い切れないのだ。

上林に死球…球場は騒然

 藤浪のコントロールが危うくなった場面は何度かあった。4回は初めての走者が内野安打で出て、1死二塁から変化球が引っかかり、上林誠知の右足に当たった。場内は騒然としたが、ジェイソン・ボスラー、板山祐太郎が打ち取られた。続く5回は大島洋平、ロドリゲスに1球もストライクが入らず連続四球。再び場内はざわついたが、後続3人が凡退した。

 最もベンチの決断が問われたのは、7回である。再び大島、ロドリゲスが安打を連ね、無死一、二塁。犠打で進めたところで9番の松葉貴大に代打を送った。スコアは0対1。同点、逆転をねらう勝負の場面に起用されたのは、右打者の辻本倫太郎だった。前日に安打を打っているとはいえ、この時点の打率は.156。スクイズも考えられる局面だが、1ボールから打ちに出て、平凡な二塁フライに倒れてしまった。

【次ページ】 「なぜ辻本?」不可思議な起用

BACK 1 2 3 NEXT
#中日ドラゴンズ
#井上一樹
#横浜DeNAベイスターズ
#藤浪晋太郎
#細川成也

プロ野球の前後の記事

ページトップ