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「勝ってこそ意味がある」中日の“藤浪対策”「先発オーダーに左打者8人」より波紋を呼んだ井上一樹監督の“ある采配”〈因縁試合の舞台裏〉
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小西斗真Toma Konishi
photograph byJIJI PRESS
posted2025/09/03 11:15
ピンチに中日打線を抑えて吠える藤浪晋太郎
「なぜ辻本?」不可思議な起用
右ならば切り札として活躍し、前日に決勝打を放ったブライト健太、通常は4番を打つ細川成也、今季5本塁打のマイケル・チェイビス、小技も考えるなら田中幹也が控えていた。どうしても左にこだわるとしても、駿太がまだ残っていた。そこで辻本。多くのファンの頭の中に疑問符が浮かんだ起用だった。
左打者を並べること自体には、故障を恐れた安全策というだけでなく、数字上の理はある。しかし、何とか勝ちたい、勝機も見えたという場面は、一気に動いてもよかったのではないか。
「俺の中で悔いはない。いつもみんなで戦うと言っている」
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藤浪に日本復帰後初勝利を献上した試合後、井上監督が最初に口にした言葉である。前回の流れから賛否があること、反響が大きいことは理解していた。自分が「矢面に立つ」とも話していた。
「勝ってこそ」の藤浪対策
結果として細川は藤浪が降板した後に代打で登場したが、チェイビスは守備だけ。ブライト、田中は欠場で終わった。プロスポーツは結果で評価される。並べた左打者で藤浪を攻略し、試合に勝てば「さすが」と称賛されていた。
敗れても「悔いはない」。実際に決断できるのはファンでも解説者でもなく監督だけがもつ権限。たしかに最善と思ったことを「悔いがある」と言われても困るが、多くのファンが消化不良の1敗だったのではなかろうか。


