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「人件費を抜いても年間20億以上かかる」ラグビーリーグワンを悩ます“マネーゲーム”の現状…名門NECの脱退危機で考えるラグビーの「投資的価値」 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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posted2025/09/03 17:02

「人件費を抜いても年間20億以上かかる」ラグビーリーグワンを悩ます“マネーゲーム”の現状…名門NECの脱退危機で考えるラグビーの「投資的価値」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2002年度に初めて日本一に輝いたNEC。多くの代表選手をはじめタレント揃いだった名門の凋落はどこではじまったのか

 日本代表の監督や日本協会の理事を歴任した宿澤広朗(故人)が40代で三井住友銀行の執行役員に抜擢され、日本協会の土田雅人・現会長がサントリーフーズ、サントリービバレッジソリューションなどグループ中核企業の社長を歴任したように、選手あがりで企業の重責を担っているOBも多い。

 リーグワンでチームの株式会社化をいちはやく断行した静岡ブルーレヴズもいまだ選手の多くはヤマハ発動機に所属する社員選手で、ブルーレヴズの山谷拓志社長は「優秀な社員を獲得するためにラグビー部は優れたツールなんです」と話す。

 団体スポーツで最も多くの人数を必要とし、選手には数多くの専門スキルとゼネラルスキルの両方が求められ、チームプレー最優先であると同時にグラウンドでは選手自身の判断が尊重される――そんなゲーム構造が優れた企業戦士を育てるというストーリーは古くから語られてきた。

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 だがNECは、ラグビーで得た優れた人材を惜しげもなく手放してきた。

人材流出も…チームとしての存続は可能なのか

 日本選手権で初優勝を飾った2002年度のシーズン、NECは実は不振に喘いでいた。主将の箕内が日本代表で参加したアジア競技大会で負傷したことも影響し、東日本社会人リーグで8チーム中7位に沈んだ。

 だが、チームはそこから奮起。地域リーグとの代表決定戦を経て勝ち上がった全国社会人大会で4強に進んで日本選手権出場権を得ると、シーズン最後の日本選手権で3連覇を目指したサントリーを破り初優勝。初の頂点を掴んだ選手たちは、胸に「MIRACLE 7」とプリントされたTシャツを着て喜びを爆発させた。7位からの奇跡。試合翌日のインタビューで、箕内主将は言った。

「NECの社内では今、景気も悪くて業績も落ち込んでいるので『V字回復』が合言葉になっていて『7位のラグビー部もV字回復だな』とよく言われていました。達成できて、会社にも勇気を与えられたと思います」

 そんな物語も過去の話になってしまった。グリーンロケッツはチームとして存続できるだろうか。譲渡先を見つける期限までは3カ月しかない。

 リーグワンの構想は日本ラグビー協会の清宮克幸副会長が「2019年ワールドカップ会場になった全国の都市をフランチャイズとする10チーム前後のプロリーグを作ろう」と野心的なプランをぶち上げたことから始まった。

【次ページ】 ラグビーに「投資対象としての魅力」はあるのか

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