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「人件費を抜いても年間20億以上かかる」ラグビーリーグワンを悩ます“マネーゲーム”の現状…名門NECの脱退危機で考えるラグビーの「投資的価値」 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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posted2025/09/03 17:02

「人件費を抜いても年間20億以上かかる」ラグビーリーグワンを悩ます“マネーゲーム”の現状…名門NECの脱退危機で考えるラグビーの「投資的価値」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2002年度に初めて日本一に輝いたNEC。多くの代表選手をはじめタレント揃いだった名門の凋落はどこではじまったのか

 だが当時のトップリーグは16チーム。実行への道筋を話し合う過程で襲ったコロナ禍も影響し、「プロ化なら撤退も」とにおわせるチームも現れ、急進的な改革案は「1チームも減らしたくない」という護送船団路線に変質した。だがそうして始まったリーグは、4年で2つめの撤退チームを出そうとしている。「誰も失いたくない」とハードルを下げた優しさが仇となってしまったのか。

 プロスポーツなら、オーナーが変わること自体は嘆くことではない。

 リーグワンで初めての連覇を達成した東芝ブレイブルーパス東京は、前述の静岡とともにリーグ1年目から株式会社化を断行した。それは業績不振に陥っていた東芝がラグビー部を手放す下準備ともささやかれたが、この夏で退任した荒岡義和前社長は「プロスポーツを目指す以上、自分たちをより高く買ってくれる相手を探すのは、当時の東芝の経営状況とは関係なく、当然だと思います」と答えた。

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 プロのラグビーチームをステータスとして、事業のシンボル・広告塔として、投資の対象として魅力的だと思う継承者=譲渡先が現れれば、それはバラ色のストーリーだ。「身売り」というネガティブな言葉を使う必要はない。焦点は、現在のリーグワンがその環境にあるのかどうか、そしてこれからどうなろうとしているかだ。

 東海林専務理事は「リーグとして、ラグビーの価値を高めることとチームの収益性を高めること、両方を目指していかないといけない」と話した。専務理事自身が触れたように、ラグビーは多くの選手を必要とするから人件費がかかる。試合での肉体的負担も大きく、試合は週1回が限度だ。その条件でどう収益性を高めるのか。

 リーグ側も努力が必要だ。チームが利益を上げられるようなスケジュール、ルール作りも考えてほしい。首都圏への過度なチーム集中、観客動員の妨げとなる同一地域での同日・同時間帯開催などの是正は喫緊の課題だ。チームやリーグの功労者へのリスペクトを欠く外国出身選手の出場カテゴリー変更案など、ファンの反発を招いている部分も見直してほしい。リーグワンが投資できる環境だと思われるためには必要なことだ。

ラグビーに「投資対象としての魅力」はあるのか

 一方で、それらの環境が改善されたとしても、グリーンロケッツというチーム自体に投資対象としての魅力がなければ買い手はつかないだろう。

 グリーンロケッツ問題は、リーグワンが持続可能な競技団体になるために何が求められているのか、その構成チームはどうあるべきなのかを問いかけている。

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親会社から「今後の発展を見込めない」…ラグビーリーグワン“日本選手権優勝3回”の名門が退会危機のナゼ 窮地のウラにラグビー特有の“ある課題”

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