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WBCのNetflix独占問題「民放はネトフリの“入り口”に成り下がる」テレビ局関係者のタメ息…「米国ではサブスクに年間70万円も」地上波からスポーツが消える日
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生島淳Jun Ikushima
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/29 17:03
記憶に新しい前回大会。来年3月のWBC、地上波では見られない公算が大きい
「前回2023年のWBC1次ラウンド東京プールの試合中継は、WBCIが当社を通じ、国内の複数の民間放送局及び海外の配信事業者に放送・配信権を付与し、地上波の番組での生中継が実現されました。しかし、本大会では、WBCIが当社を通さずに直接Netflixに対し、東京プールを含む全試合について、日本国内での放送・配信権を付与しました」
つまり、ウチは興行を行う立場にもかかわらず、放映権については、何も聞かされてませんでした! という立場を明らかにした。読売新聞はこう続けた。
「当社は今後も東京プールの主催者として、多くの方々に本大会を楽しんでいただけるよう引き続き努めてまいります」
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話題になったのは、「引き続き務めてまいります」という文言。地上波での中継実現に向けて努力をするということなのか? ぜひとも頑張っていただきたいが、果たしてどうなることやら。また、読売新聞はこう注釈めいたものを付け加えていた。
「なお、NHK及び民間放送各局は、報道目的での試合映像は放映できますので、テレビニュースでは従来どおり試合のハイライトをご覧いただけます」
だから、情報番組では扱うことが可能なわけだ。とあるテレビ局の関係者は、こう自虐的に話す。
「現段階では、サブライセンスもないと思われます。ただし、素材は使えるというわけです。ボクシングの井上尚弥と同じパターンですよ。結局、民放はNetflixへのゲートウェイに成り下がることになるでしょう」
NPB「事前に聞いていました」
一方、日本プロ野球機構(NPB)は「事前通告を受けておりました」と声明を出した。
「本大会の放送・配信に関する権利は主催者であるWBCIが独占的に保有しており、今回の決定についてはWBCIから事前に通告を受けておりました」
はて?
主催者からの事前通告に対し、唯々諾々と従っただけで、日本のファンに広く見てもらおうという交渉は一切、しなかったという解釈でよろしいでしょうか?
地上波で見られればありがたい、と思っているファンにとって、NPBはまったく頼りにならない組織であることを露呈した格好だ。
でも、去年の日本シリーズの中継については、ワールドシリーズのハイライトをぶつけたフジテレビに対し、かなり高圧的な態度を取っていたが……。広く野球を見てもらうという観点から見ると、この声明はだいぶ矛盾しているように読める。NPBはシニア層への心づかいや、ジュニア・エントリー層への普及については、どう考えているのだろう?
