バレーボールPRESSBACK NUMBER
「やっぱり真佑にはバレてるんだなぁ」女子バレー主将・石川真佑と“159cmセッター”中川つかさ25歳コンビの絆…ライバルが最強の仲間になった夏
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2025/08/27 17:02
バレーボール女子日本代表の合宿中に25歳になった中川つかさ(右)を祝う石川真佑
アンダー世代などでは味方としてプレーしたこともある2人だが、分岐点となったのは高校最後の春高バレーを戦った2019年だった。
石川を擁する下北沢成徳はインターハイ、国体に続く高校三冠が懸かっていたが、準決勝で東九州龍谷高(大分)に敗れた。それは「打倒・成徳」に燃えていた金蘭会の中川にとっても予期せぬ結末だった。準決勝に向けて会場の隅で準備をする中川は「真佑が負けるところを見られなかったし、見たくなかった」と背を向けていた。
春高を制した中川は東海大へ進学。在学中も多くの出場機会を得て着実に一歩ずつ進んでいくのだが、一方、飛躍的なスピードで一気に世界へ飛び出していったのが石川だった。
ADVERTISEMENT
同年7月のU20世界選手権、8月のアジア選手権で優勝。シニア日本代表にも選出され、9月のワールドカップに名を連ねた後、2021年の東京五輪にも出場した。
同じ時代を戦ってきた仲間の活躍は嬉しく、誇らしい。ただ、当時の中川は悔しさも噛みしめていた。
「何でこんなにちっちゃいんだろうって思うぐらい、背が小さいこと(159センチ)でコンプレックスと悔しさを感じることしかなかったんです。高校を卒業してVリーグに行きたい、挑戦したい気持ちもあったけど、この身長じゃ通用しないんだろうなと思って大学を選んだ。その選択は全く後悔していないし、むしろ東海大へ進んでよかったと今は胸を張って言えます。だけど、その時々で同じ世代の選手がVリーグで活躍したり、世界と戦う姿を見るのが悔しい時もありました。いつか絶対、私もその場所に行きたいという思いをずっと持ち続けてきました」
今シーズンは“勝負の場”
中川が先を歩く石川に近づいたのはNECレッドロケッツに入団した2023年。初めて日本代表登録選手に選出され、アジア競技大会に出場を果たした。しかし、翌年の24年はパリ五輪の選考から漏れた。だからこそ、ロサンゼルス五輪に向けたスタートにあたる今季の代表活動は、これまで以上に“勝負の場”と位置付けて臨んだシーズンでもあった。
負けん気の強さとバレーボールに対する情熱は学生時代から変わらない。ただ、石川は中川の変化を感じ取っていた。



