「世界選手権の銅は、自分のなかでは五輪以上」その真意は？ 伊藤美誠が説く“メダルの重み”…「これまでの全大会で一番のゲームができた」 

「自分でもすごいなって」

「1ゲームを6-11で取られたんですが、サーブは全部取れているので、レシーブを1本でも取れば、チャンスあるじゃんって思ったんです。それをベンチコーチに入っていた母にも言ったんですけど、実際2ゲームからレシーブを1本1本工夫して返そうと思って臨んだら、それがドンピシャにハマって2ゲーム目を取ることができたんです。

　レシーブからスマッシュに持っていけましたし、変化をつけて攻撃できた。自分で戦況を考え、切り替えて、実際にやり切ることができた。それは自分でもすごいなって思いましたし、そう思えてからはすごくリラックスして戦うことができました」

ドーハ大会の準々決勝で難敵・王芸迪（左）を下した　©JIJI PRESS

　4-1というスコアで王芸迪に勝てたのは、自ら考え、武器を活かした戦型が定着してきたことが大きいが、同時に戦う以前の環境を整え、ストレスフリーで試合に臨むことに注力したのも大きい。

ADVERTISEMENT

「海外では、試合の準備の過程ではいろいろあってイライラしちゃう部分もあるんですよ。昨年からは、海外だからしょうがないと思うところと、ホテルとかで直せるところは代表スタッフに言って修正してもらうなど、うまく区別することでリラックスして過ごすようにして。

　それと、以前はホテルと試合会場を行き来するだけでしたが、外に出て、日本と違う雰囲気や空気を味わうなど、その場を満喫して日本に帰るようにしたんです。ドーハの時もホテルの環境で整えられるところは整え、試合に向けて集中していくことができました。改めて試合に向けての準備がいかに大切か、この大会でさらに理解することができました」

一生の思い出のメダル

　準々決勝の4試合は、すべて日本vs中国になったが、早田ひな、大藤沙月、張本美和は敗れ、伊藤だけが準決勝に進出した。もう一つ上の世界を見るために臨んだ準決勝では、世界ランキング1位で東京五輪の準決勝で敗れた孫穎莎（中国）と対戦した。ゲームはストレートで敗れたが、「孫選手のボールはやっぱりすごい。威力、回転量が違った。でも、最後まで楽しめた。自分の力でしっかりメダルまでたどり着いたのは一生の思い出」と、充実した表情を見せた。

【次ページ】　世界選手権と五輪の違いとは