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「世界選手権の銅は、自分のなかでは五輪以上」その真意は? 伊藤美誠が説く“メダルの重み”…「これまでの全大会で一番のゲームができた」
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佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2025/08/27 11:01
5月の世界選手権で銅メダルを獲得した伊藤。ある意味「五輪以上」というメダルの価値について語った
銅メダルを見つめ、満面の笑みを浮かべる姿が印象的だったが、それにはもちろん理由があった。
「世界選手権の銅メダルは、東京五輪での銅メダルとは違うんですよ」
伊藤は、そう言った。
世界選手権と五輪の違いとは
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「五輪の時は、各国で2人しか出られないので、中国人選手が決勝に行くと銅メダル決定戦は中国人選手以外になるんです。そうなった場合、日本人が勝ってメダルを取らないとダメだろう、そんな空気が当たり前のようにあったんです。
だから、ユ・モンユ選手(シンガポール)に勝って銅メダルを取っても自分のなかでは当たり前だと思っていたので、そんなに喜べませんでした。むしろ準決勝で孫穎莎選手に負けてしまい、悔しい気持ちの方が大きかった。でも、世界選手権は、中国人選手に勝ってのメダル。五輪の時よりも今回の方が自分のなかでは、価値も喜びも大きいです(笑)」
伊藤の言葉は、大きな国際大会で中国人選手に勝つのがいかに難しいかを表している。中国は五輪や世界選手権の大舞台では、国の威信をかけて完璧な準備をしてくる。今回でいえば大会の2週間前から組み合わせが決まっていたので、おそらく中国は伊藤に対して万全の対策をして臨んできたはずだ。試合では、いつも以上に集中し、通常の国際試合よりもうワンランク、ツーランク上の力を発揮してくる。その中国人選手を破ってのメダルなので、1勝の重み、メダルの価値が異なるのは容易に理解できる。
これまでのすべての大会で一番のゲーム
「ダブルスは、東京五輪のミックスで勝った時は信じられない気持ちが強かったんです。でも、今回はすごくうれしかったですし、心から喜べました(笑)。シングルスとしては、これまで出場したすべての大会のなかで一番のゲームだと思います」
東京五輪以降、試合に勝てなくなっていくなかで、自分は何をすべきか、をずっと探し続けてきた。パリ五輪の落選が自分を見直し、武器を再認識し、方向性を見定めるいいキッカケになった。

