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「全員が少し余裕を持ってしまった」甲子園“優勝候補の大本命”横浜敗退の衝撃…その誤算の正体とは? 涙の主将は「全て出し切って負けたので…」 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2025/08/20 11:09

「全員が少し余裕を持ってしまった」甲子園“優勝候補の大本命”横浜敗退の衝撃…その誤算の正体とは? 涙の主将は「全て出し切って負けたので…」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

延長12回の激闘の末、県岐商にサヨナラ安打を打たれた横浜エースの奥村頼人。一時は3点リードの瞬間もあったが、その差が鬼門となったという

 奥村凌がこのワンプレーのみならず、3年間の歩みを誇る。

「今までの練習だけじゃなくて。3年間、監督と高山(大輝)コーチはじめとする指導者に教わってきた人間性だったり、気遣いだったりが最後に出たのかなと思います」

延長で3点勝ち越し…「集中力が切れてしまった」

 守りで攻め続けた横浜がようやく主導権を握ったのが、タイブレークに突入した延長10回である。相手のエラーとキャプテン・阿部葉太のタイムリーで3点を勝ち越し、形勢を逆転させた――はずだった。

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 3点。これが結果的に、横浜にとって致命的な足かせとなってしまう。

 村田が唇を噛む。

「タイブレークで3点取ったあとのアウトを増やす意識というか、そこがちょっと疎かになったかなって。あそこが一番、集中力が切れてしまったかなと思ってですね」

 振り返れば、それが気持ちの弛緩だったのかもしれないと自戒するのは、10回裏のマウンドにも上がった奥村頼である。

「3点入った時に『アウトをひとつずつ取っていこう』って声があって。それが気の緩みだったのかなと。バッターに対して全力で勝負していかなければいけないところで『1点は取られてもいい』と、少し逃げてしまった部分がありました」

 自責はエースだけではない。

 3点リードという“安全圏”は、無条件で一、二塁からイニングが始まるタイブレークの緊張感を薄めてしまっていたのである。

 この回の先頭バッターへの初球。奥村頼は真ん中低めストレートをセンター前へと運ばれ、無死満塁とピンチを拡大してしまう。

 キャッチャーの駒橋優樹は、それは自分の責任だとばかりに悔やむ。

「全員が少し余裕を持っていたというか。そういう流れで簡単に入ってしまって、センター前を打たれて。そこをもうちょっと……他の入り方があったのかな? と考えます」

【次ページ】 主将は試合後…「全て出し切って負けたんで」

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