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野ボール横丁BACK NUMBER
仙台育英の誤算“たった1つの想定外”「80球以降に制球が乱れる」沖縄尚学エース・末吉良丞の衝撃…須江航監督に密着記者は“甲子園名試合”をこう見た
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/18 17:00
沖縄尚学に敗れ、泣き崩れる仙台育英ナイン
「トーナメントなので仮にうちが1で相手が9でも勝機はあると思いますよ。タイブレークにすれば、どこと対戦してもチャンスはありますから。タイブレークは違う競技だと思っているので。だから、なんとかしてタイブレークに持ち込みたいと思いますけどね。ただ、そういう展開にするには条件が1つあります。守れれば、です」
須江はわずか数分のうちに驚くほど詳細にゲームプランを明かした。これはそのうちの一部だ。実際にはもっとたくさん話していたし、須江の頭の中にはこの何倍もの下書きが描かれていたのだろう。
仙台育英と沖縄尚学の試合は、須江が事前に示したグランドデザインと、実際のゲームを比較する作業でもあった。
ひとつの想定外「末吉良丞の衝撃」
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仙台育英は1回裏に幸先よく1点を先制するも、2回表にライトのエラーで1−1の同点に追いつかれてしまう。須江の回想だ。
「五分五分か、やや負けているぐらいのイメージを持っていたので先制点が入って、ややこちらが有利になったかなと思ったところでミスが出てしまった。そこからは五分五分のまま進んで行きましたね」
1点を勝ち越されて迎えた5回裏、須江の設計図通りに事が運んだ。
4回を終えて71球と球数が多かった末吉は1アウト二塁から2者連続でデッドボールを与え、満塁と傷口を広げる。ここで仙台育英の4番・川尻結大がライト前ヒットを放ち、仙台育英は3−2と逆転に成功した。
末吉が出した2つのデッドボール。それは実に80球目と81球目だった。須江が言う。
「あそこ(の読み)はピッタリだったんですけどね。ただ、末吉君はそこからよく立て直しましたよね」
1年生ショートの砂涼人は4回でベンチに退き、以降はベンチから戦況を見守った。
「こっちの打線も上級生はすごくいいバッターが揃っているんですけど、少し苦しんでいた。いつもなら終盤で対応していくのに、最後まで打ちあぐねた印象でした。やっぱり(末吉は)後半のスタミナがすごいのかなって」
終盤の展開も須江が望んでいた通りになった。仙台育英は7回に再び同点とされ、勝負は3−3のままタイブレークにもつれ込む。
〈つづく〉

