「木内のじいさんの涙の芝居で、頑張ろうと（笑）」名将・木内幸男マジックでPLを撃破…取手二高の甲子園優勝メンバーだった現監督は「もう一度取手を元気に」 

　木内は、この大敗を好機と見た。

「桑田が試合後に『関東の横綱ってこんなもんですか』と言ったことを記者から伝え聞きました。桑田がそんなこと言うはずないじゃないですか（笑）。じいさんが記者に作り話を言わせたんです。こちらは『クソッ！』ってなるじゃないですか。あれからみんなの意識が変わりました」

現在監督をつとめる下田和彦（左）と、山崎昌弘コーチ　©Katsuharu Uchida

木内監督の思惑通りに

　ボイコット、そしてPLとの招待試合を経て、チームは間違いなく本気になった。全ては木内の思惑通りだった。夏の茨城大会決勝で竜ヶ崎一に13対3と大勝。万全の状態で3年ぶり4度目の夏甲子園に乗り込んだ。
　
　初戦となる2回戦、尾藤公監督が率いる箕島（和歌山）と対戦した。1979年以来の全国制覇を目指す優勝候補を相手に7回まで0対3と劣勢も、8回、突如降り出した雨の影響でリズムを崩した相手先発・嶋田章弘（阪神、近鉄など）、2番手の杉本正志（広島、ロッテなど）から5点を奪い逆転勝ちした。

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　実は試合前「勝ったら海水浴に連れて行ってやる」と選手たちと約束していた。その言葉通り、翌日は練習をオフにして関西有数の海水浴場である兵庫・須磨海岸へと繰り出しリフレッシュ。慣れない長期遠征で疲弊する選手たちへの配慮も忘れなかった。

「じいさんは箕島の尾藤監督が憧れだったようで、試合前は結構弱気なことを言っていました。個人的には尾藤さんとじいさんが入れ替わったのがあの試合だと思っています」

　この一戦で勢いに乗ったチームはその後、福岡大大濠、鹿児島商工（現樟南）、鎮西（熊本）と九州勢を次々撃破。そしてPLと決勝という最高の舞台でリベンジの機会を得た。

最高の舞台で最大の強敵と

　8月21日。試合前から降り続いた雨は、再び取手二に味方することになる。

「噂によると桑田は中止と聞いていたらしいです。ウチはやるつもりでベンチ前でキャッチボールをしたりして調整していました」

　一度切れた気持ちを立て直すのは一流選手でも難しい。まして桑田はこの日投げれば3連投。右手中指のマメの影響もあったため、雨天順延の報に一度は安堵したことだろう。

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