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甲子園の風BACK NUMBER
「夏の甲子園、公立校の優勝はもう無理?」18年前から優勝ゼロ…“史上最少6校のみ”低迷する公立校の本音「佐賀北も練習時間が激減した」「部活全体が縮小」
text by

田中仰Aogu Tanaka
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/15 11:09
2007年夏に優勝した佐賀北。この“がばい旋風”以降、公立校は優勝していない
「去年ここ(県岐阜)に赴任しました。県立の学校によってはね、野球部だけじゃなくて部活全体が縮小しているところもあります。実際に見てきましたので。ただ昨秋から監督を引き継いで感じるのは、ここは充実しているということ。歴史があってOBの方のサポートも。進路の面もサポートが手厚くてね」
今年で野球部創部100周年の県岐阜商は、春夏通算61回、優勝4回、準優勝6回を誇る古豪だ。OBに高木守道(元中日)や和田一浩(元中日ほか)らがいる。現在の部員数は3学年合わせて71人。それでも専用の練習グラウンドはなく、県内出身選手が多勢を占める。寮はない。各学年で3人ほどいる県外選手は下宿で生活している。
「よく選手たちに言うんです。野球の試合を2時間とすると、そのなかでボールが動いている時間って十数分とかじゃないですか。(強豪を相手に)個人の力で劣ったとしても、ボールが動かない“間”をうまく使えば勝てる。脳みそをフル回転させよう、って。打者に応じたポジショニングも、サインに頼らずに選手がセーフティバントを試みるのもそうです。私学に勝つために意識したのはそこです」
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――公立校は全国的に苦しい状況で、合同チームも増えています。等身大のメッセージを伝えるならば?
「うちは朝練もしてません。放課後もテキパキ動いて、8時過ぎには帰ろうと。たしかに時間はない。なので、あれもこれもとやらずに、今日はこの練習、明日はこの練習……とコツコツやることに尽きると思います。そうすることで意外とね、チームができていったという印象があります」
県岐阜は公立校最後の登場となった。ここまで公立校の初戦戦績は2勝3敗。県岐阜が勝てばタイになる。
8月11日の第1試合、相手は日大山形。「打線でつなぐ」「試合の流れを読む」「守備から流れをつくる」。試合は県立岐阜商が得意とする流れで運ぶ。1回に1点を先制されるも、中盤まで粘る。すると5回裏、タイムリー安打2本で逆転。7回には2本のタイムリー、押し出し四球でダメ押しとなる4点を追加した。6-3。県岐阜が逆転で日大山形を下す。これで公立校の初戦戦績は3勝3敗。古豪の県岐阜が牙城を守った。
勝った試合後のインタビュー。藤井はやはり普通の先生然としていた。雨天による中断について問われた藤井は言った。
「憧れの甲子園でこんなに長く座らせてもらって……うれしいねって思ってました」
6校の奮戦に全国公立校の野球部は何を見るか。

