「裏切られたという思いある」PL学園OB・ファンが号泣…“最後の12人が敗れた”試合「みんなに迷惑をかけた」高校野球の超名門が消えた日 

「今の同級生は、下級生の時に試合に出ていた選手がひとりもいない。いくら練習試合といっても、僕が試合に出れば、誰かの出場機会を奪うことになる。僕が出場するより、他の選手が1打席でも経験した方がいいし、1回でも守った方が、チームのためになると思っています」

最後の夏…2つの課題

　昨秋の大阪大会でPL学園は、初戦で公立の汎愛高校にサヨナラ本塁打を浴びて敗れた。それでも主将の梅田翔大を中心に「目標は甲子園」と言い続けた。全国制覇7度を誇る名門校の部員として、「まずは1勝」と現実的な目標を口にすることは憚られた。

梅田翔大主将（右から4人目）らPL学園ナイン ©JIJI PRESS

　春先からのおよそ10試合を観戦してきて、公式戦初勝利に向けて、62期生には大きな課題がふたつあった。

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　まずはエースの復調だ。藤村哲平は立ち上がりに大きな不安を抱えていた。ストライクが入らず、初回から四死球を連発し、試合を壊すケースを何度か目にした。投手を専門とする選手が藤村だけのチーム事情で、本人も結果を焦って練習に力が入りすぎたのかもしれない。4月に右肩の炎症を起こし、春の大阪大会は登板を回避した。

　もうひとつの課題は打線がつながらないことだ。好調を持続していたチーム一のパワーを持つ4番の藤原光希や、チーム一の俊足である5番の安達星太らに単打は出るものの、それがことごとく点に結びついていかない。そもそも投手力が心許ないPLは、ロースコアで勝利する展開は望めず、8対5とか、9対7といったように、ある程度得点を重ねて泥仕合に持ち込むしか勝算はないのである。

　普段の練習では、守備よりもバッティングの練習に費やし、二塁に走者を置いたシート打撃に、徹底的に時間を割いた。コーチの千葉が明かす。

「長打が期待できる選手がいないので、単打が出たらバントで送り、一本のヒットで帰ってくる。そんな練習を繰り返しました」

2016年7月15日、東大阪大柏原戦を迎えたPL学園ナイン ©Hideki Sugiyama

「涙を流す」OB、ファンの様子

　7月15日、東大阪大柏原戦には、往年の高校野球ファンや220人の報道陣、そして歴代のOBが駆けつけた。地方大会の初戦としては異様な雰囲気に、エースは完全に飲まれていた。1回表に打線がつながり、幸先よく2点を先制しながら、藤村がすぐに同点に追いつかれてしまう。さらに2回裏には、四球を連発して降板。梅田にスイッチした。3点の勝ち越しを許したものの、早い交代が功を奏し、その後は梅田の安定した投球で相手打線を抑えてゆく。投手交代の決断を下したのは、野球経験のない監督を補佐する参謀役の土井であった。

　2対5で迎えた6回表には、痩身の内野手・水上真斗の2点タイムリーが飛び出した。水上は会心の一打に誇らしげだった。

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