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PL学園で起きた“最後の試合前日”の事件…骨折と脱臼で2人が緊急離脱、戦えるメンバー9人の異常事態に「僕の右肩なんてどうなってもいい」
posted2025/08/18 06:00
2016年夏の大阪大会を戦ったPL学園「最後の12人」
text by

柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph by
JIJI PRESS
5年ほど前だったか、PL学園の卒業生である桑田真澄に、高校時代の思い出を語ってもらう機会があった。春夏の甲子園で20勝している桑田は、「高校野球には神様がいるんです」と力説していた。
「毎年、夏の暑い季節になると僕らの前に現れて、ものすごい力を与えてくれる。僕は1年生の夏から5季連続で甲子園に出場することができましたが、何度もその存在を実感しました」
本当に野球の神様がいるならば、どうして苦境が続くPL学園の最後のナインに、救いの手をさしのべないのか。
PL学園“最後の試合”前日の事件
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この夏の大阪大会初戦――60年以上の歴史を持つPL学園にとって最後の試合となった東大阪大柏原戦前日(7月14日)のこと。わずか12人の62期生をさらに窮地に追い込むアクシデントが襲った。
シート打撃中にセカンドとライトの中間に浅いフライが飛んだ。背走しながら白球を追った内野手の河野友哉と、真っ直ぐ突進してきた控え外野手の正垣静玖が激突。河野はその場に倒れ込んで呻き声をあげ、正垣は左肩を抱えてうずくまった。
翌日の試合出場が絶望的になったことは、誰の目にも明らかだった。しばらく日陰で横になっていた河野の呻き声は、断末魔のような叫び声に変わった。大会前最後の練習であるにも関わらず監督の姿はなく、慌ててグラウンドにやって来た部長がふたりを病院に運び、河野が左足大腿の骨折、正垣が左肩亜脱臼と診断された。
試合当日の朝、その一報を受けた私にはいったい誰が代わりに試合に出場するのだろうか、というシンプルな疑問が浮かんだ。
