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阪神・佐藤輝明が「プロ5年目で初めてLINEにすぐレスしてきた」大学恩師が驚いた“好調の自己分析”とは…「フォームの理解が深まった」!?
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/08/31 11:05
今季好調の要因を聞いたLINEへの佐藤輝明の返事の内容もさることながら、恩師がそれ以上にビックリしたこととは……?
こうした要素の一つ一つが、佐藤本人の感覚として、しっくりくるものがあったのだろうと、田中は推察している。そうした背景を踏まえてから読むと、佐藤が田中に送って来たメッセージの意味合いが、どことなく伝わってくる。
それが「バッティングフォームに対する理解の深まり」という表現なのだろう。
「だから、トータルで、なんでしょうね。矢野監督で2年、岡田監督で2年。その4年間で、いろいろな人からいろいろなことを言われ、シアトルにも行った。そういう中で、ようやく何かを掴んできたんでしょうね」
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ワンスイングで佐藤の素質を見抜いた田中だからこそ、そのメッセージの含意に佐藤の成長を見て取ったわけだ。
「だから、まだまだ打ってほしいですわ」
メジャーをナメるなよ
その期待の一方で、2024年オフ、将来的なメジャー志向を表明したことに、田中は不満とばかりに、少々顔をしかめた。
「何を言うとんねん、こいつ、と僕は見ています。メジャーをナメるなよと」
教え子に黒田博樹がいる田中だからこそ、これに関しては実に手厳しい。
2011年、ドジャース時代の黒田に招かれ、1週間にわたって、ドジャースをはじめ、メジャー、マイナーの現状を視察して回った。中4日の先発ローテーションは、時差が伴う移動で「中3.5日、3.3日のときがあります」と黒田は、メジャーリーグの厳しさを実感を持って教えてくれたという。
メジャーリーガーになっても、専修大時代に初めて用具提供してくれたメーカーのグラブを使い続けていた黒田には、世界的なスポーツメーカーから何度となくオファーがあったというが、すべて断っていたのだという。
「お前、えらいな。いまだに大学時代と同じメーカーやねんな」
田中がそう言うと、黒田はオファーしてきた世界的企業の契約金が、日本の長い付き合いのメーカーと「2桁違うんですよ」と大笑いしたのだという。
その心意気が、佐藤に欲しいのだという。
世界のスラッガーになるために
「やっぱり、プロ野球に行く子って、技術があるから行くわけじゃないですか。そこで何が勝負かといったら、頭と心しかない。僕はそう思うんです。佐藤に、黒田の考え方とか取り組み方とかがあったら、とてつもない選手になると思います。持っているポテンシャルはホントに高いんで」
目指すべき姿は、恩師の脳裏にはすでに出来上がっている。
黒田博樹のような男気を持った、令和の三冠王——。
阪神の、日本の、そして世界のスラッガーへ。佐藤輝明は、まだまだ進化の途上なのだ。
〈全4回の4回目/1回目から読む〉

