「正直、野球部が嫌いな校長もおったし…」高校野球“消えた名門”箕島高校…最後に甲子園に出た前監督の告白「箕島はこうして勝てなくなった」 

「僕から言わせたら、出んなって思いますね。甲子園出てベスト4ならわかるけど、県予選でベスト4って。準決勝まで行ったとして、どんな戦いするの。恥をかかないような試合を、くらいの意識しかないから、無理ですよ。1回戦、2回戦でテキトーなところとやって負けたら恥かかんで済むのにな、とすら思う。耐久と選手の取り合い？　耐久の悪いこと言うわけじゃないけど、どこと勝負してんねんって話。もっと上目指しませんかって。それじゃ一生甲子園出られへんって」

　どこか投げやりにも聞こえる発言だったが、違和感があった。リアリストであるはずの強が、現実的な目標として掲げられた「ベスト4」に、なぜ失望を隠さないのか。尾藤公の時代とは違う。甲子園出場が困難であることは誰よりも深く理解しているはずだ。そして気がついた。彼は箕島の復活をなかば諦めながら、心のどこかで万にひとつの奇跡を信じているのだ。1979年8月16日に甲子園球場で起きたような、想像を絶するほどの奇跡を。

箕島高校の練習。朝練を含めると、1日の練習時間は6時間以上にも及ぶ　©NumberWeb

「佐賀北と金足農で終わった」

　出会い頭に強が発した「いまの高校野球、面白いですか？」という問いを反芻する。そしてほぼ同じ質問を投げ返す。いまの高校野球は、つまらないですか。

ADVERTISEMENT

「無理に盛り上げてる感はすごくある。マスコミさんも取材に来てましたけど、決まって『感動エピソードないですか』と聞かれましたから。ドラフトの番組とかも、片親じゃなかったらあかんのか、と。美談化しすぎですよね。監督時代に負けたあとのラストミーティングを取材させてくれと言われましたけど、絶対せんといて、と。『今日負けたんは俺のせいや。でも今日で人生終わったわけじゃない。これからの人生長いから、今日の負けを糧に頑張ってくれ』。みんなそれ。アホか。なんにも心こめてなくても言えるわ。そんなんばっかりじゃないですか」

　耳が痛い言葉だった。そして高校野球の歪な構造ついて、ふたたび醒めた目に戻って持論を述べた。

箕島高校、現監督の北畑清誠（手前）は熱心に選手を指導する　©NumberWeb

「いい選手をどんどん集めて全日本クラスのチームを作るところもあれば、人数が足りなくて合同チームを作るところもある。格差はすごい問題。イオンみたいな大型ショッピングモールと近所の八百屋を比べて、『品揃え悪いやんけ、この八百屋は』と言われているみたいなところがあるんでね。いまの高校野球ってこうやな、と残念に思う気持ちはありますよ。公立が甲子園で強豪を倒していくみたいな美談は、佐賀北と金足農業で終わったのかなと」

「もう無理やなって諦めてるけど…」

――箕島に、もう一度甲子園に行ってほしいと思いますか。

【次ページ】　「もう無理やなって諦めてるけど…」