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「じつは“飛ばないバット以前”より成績アップ」甲子園の新規格バット2年目…1本3万円超は「高いよ、との声も」高野連が酷暑問題とともに語る
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/08/05 06:01
2025年センバツ優勝校となった横浜。この大会の打撃データを見ると、新規格バット2年目の興味深い傾向が見えた
「今春、関西地区のグラウンドでU18選抜の合宿をしたのですが、U-18高校日本代表の小倉全由監督は『打撃そのものが随分変わっている』と言われました。従来のバットの場合、バットをボールにぶつけに行くようなスイングをしていたのが、新規格のバットになってからは下半身主導で、いわゆるインサイドアウトと言われるような形でスイングをしていると、力任せの打撃から、打撃のあるべきスイングに変わってきている。その点では一定の効果があったのではないかと考えています」
“打球速度問題”は一定の効果があった
では、打球速度が上がることで野手、投手の怪我のリスクが上がるという問題については、どうなるのだろうか?
「新しい金属バットを導入した際に、打球が投手に到達するまでの時間は0.44秒と、以前のバットよりも遅くなりましたので、一定の効果があったと考えています。各校の打者が新しい金属バットに適応して振り抜くようになって、打球速度が上がったかどうかは計測していないのですが、今のところ重大な受傷事故の報告は受けていません。ただ都道府県での試合も含めて詳しく調べているところです。この件は、打球速度を計測するなど、引き続き注視していくつもりです」
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実は阪神甲子園球場には弾道測定器の「トラックマン」や、打球、選手の動きを映像で捕捉してデータ化できる「ホークアイ」を基幹とするトラッキングシステムが設置されている。これは阪神タイガースが所有、管理しているが、今後は球団の協力を得て活用することも考えるべきかもしれない。
1本3万円超…「高いよ、という声は確かに」
打球に当たって投手や野手が負傷する問題は、競技人口や参加校数が減少する中で「実力差がありすぎる学校の対戦」が増えていることにも起因している。
練習時間の確保もままならない「連合チーム」と、トレーニングジムに通って打球速度を上げるなど高度な練習をしている強豪校が対戦している現状では、受傷事故のリスクは常に存在していると言えよう。
さらに価格の問題である。「R規格」の金属バットは1本3万円以上する。

