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かつて「親バカ采配」批判も…“ノムさんの息子”野村克則52歳の今「首位阪神の名コーチに」「20年間コーチ業…原点は父・野村克也との“最後の1年”」
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佐藤春佳Haruka Sato
photograph byNumberWeb
posted2025/08/07 11:03
NumberWebのインタビューに応じた野村克則氏(52歳)。現在、阪神タイガースで一軍バッテリーコーチをつとめる
札幌ドームに「ノムラコール」が渦巻き、大きな歓声が降り注ぐなか5度の胴上げ。当時楽天のバッテリーコーチだった克則は、輪の中で父の姿を目に焼き付けた。
「やっぱり凄い人だったんだな、って。この人の下でやれたことは幸せだったなと思ったら、泣けてきちゃいました。日本ハムと楽天の選手が入り混じって、両チームのファンの方たちも盛り上がっていて……。父の幸せな野球人生の最後を見届けられたことは僕にとって本当にありがたいことでした」
25年前に語っていた「父の願い」
父に導かれた野球人生だった。ヤクルトから阪神、巨人を経て楽天へ。名将・野村監督の去就に翻弄されるように、2度のトレードを経験した。偉大な父の背中を追う重圧に苛まれ、時に猛烈なバッシングを浴びながらも野球に学び、野球を楽しんできた。
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「色々な球団で野球をして、色々な人と出会いがあったからこそ、こうして今も野球に関わっていられる。色々な辛いことも経験したからこそ、人の気持ちや痛みが分かることもある。全てのことが今に繋がっていると思います」
2000年1月、ヤクルトから阪神へ金銭トレードが決まった時に、当時の阪神・野村監督は克則についてこんなコメントをしている。
「彼の夢は、野球に携わる仕事をしたいということで、父としては勉強させて人間関係とか指導力とかを身につけさせたい。何とかそういう道へ行けるように育てたいと思っています」
克則は2006年限りで現役を引退後、楽天、巨人、ヤクルトでコーチを務め、現在も阪神の一軍バッテリーコーチとして腕を振るう。野球の知識の深さと探究心、明るく熱心な選手指導には定評があり、現在まで一度も空白期間なく指導者としてチームに求め続けられている。
「何とかそういう道へ行けるように……」。25年前の父の願いは結実し、野球界の次代と向き合う息子によって“野村イズム”は今なお息づいている。


