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「“このまま引退”はない」寺地拳四朗33歳を倒した“苦労人”サンドバルとは何者?「すぐに簡単な試合にならないと感じた」英国人記者も嘆いた予想外の結末 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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photograph byNaoki Kitagawa

posted2025/08/02 11:07

「“このまま引退”はない」寺地拳四朗33歳を倒した“苦労人”サンドバルとは何者?「すぐに簡単な試合にならないと感じた」英国人記者も嘆いた予想外の結末<Number Web> photograph by Naoki Kitagawa

試合後、言葉少なに会場を後にした寺地拳四朗(33歳)。顔が腫れ上がっていた

 新王者の評価をこの1試合で定めるのはまだ早すぎる。これから先を見守っていかなければならない。しかし、パウンド・フォー・パウンド・ランキングに入る選手であり、“階級最強”と目される王者を打ち破ったのであれば、求められるものは当然大きくなる。エリートレベルのチャンピオンと認められるために、今後まずはやはり拳四朗とのリターンマッチが視界に入るのではないか。

早ければ年内で再戦も?

 拳四朗はもう33歳と年齢を重ねてきたとはいえ、私は彼がこのまま引退するとは考えていない。サンドバルの素晴らしさを認めた上でも、試合は接戦だった。個人的には7−5でサンドバルが上回ったと見ており、ダウンを喫した分を1ポイント差し引いても1ポイント差で新王者の誕生だと思った。ジャッジの一人が採点した117-110というスコアはどう見ても開きすぎだった。そういった内容を思い返せば、拳四朗は雪辱したいと感じるはずで、だから早期の再戦は基本線ではないか。

 個人的には拳四朗にもアメリカで戦ってほしい。サンドバルのホームであるアメリカ西海岸でリターンマッチが実現すればドラマチックだし、ほとんど理想的な舞台になる。拳四朗にとってもキャリアのこの時点での米リング登場は大勝負となるだろう。ただ、現実的にはサンドバルの知名度はアメリカでも高くはなく、軽量級の戦いは日本の方が儲かる。だから早ければ年内にも日本で再戦することになると思う。

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 繰り返しになるが、拳四朗対サンドバル戦はあらゆる面で互角の戦いだった。拳四朗が奪ったラウンドも僅差であり、再戦するとしても際どい戦いが続くと思う。拳四朗がディフェンスを改善できれば、やや有利かもしれない。それでも今後、お互いの状況がどう変わるか次第なところがあり、現状での勝敗予想は難しい。

 タイトルを持って故郷に帰るサンドバルは熱烈な歓迎を受けるはずで、その後もボクシングへの献身的な姿勢を保てるかどうか。新王者はここで自信をつけ、さらにボクサーとして成長できるか。一方、拳四朗はもう一度力を振り絞り、矢吹戦同様に再戦での強さを見せつけることができるか。それらの問いに答えが出るリマッチは文句なしに魅力的なカードだ。これから先の拳四朗とサンドバルがどんな方向に向かっていくか、私ももうしばらく楽しみに見守っていきたい。〈全2回/前編から続く〉

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「私は拳四朗の大ファンだが」英国人記者もショックの敗戦…ボクシング寺地拳四朗“まさかの王者陥落”はなぜ起きた?「最大の弱点が致命傷になった」

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