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“名門”横浜F・マリノスが直面するクラブ史上最大の危機…J2降格圏に沈むチームの主将・喜田拓也が明かした横浜ダービーへの思い「ここがラストチャンス」
posted2025/08/09 11:01
クラブ史上初のJ2降格の危機に直面している横浜F・マリノスのキャプテン喜田拓也がチームの現状と展望を語った
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Getty Images
横浜F・マリノス、最大の危機
Jリーグ発足時の「オリジナル10」でいまだJ2への降格がないのは鹿島アントラーズと横浜F・マリノスの2クラブだけである。その一角、名門F・マリノスに最大の危機が訪れている。
2019年、22年のJ1を制したアタッキングフットボールの香りが消え、2度の監督交代、ケガ人続出もあって一時は最下位を独走する事態に追い込まれた。前身の日産自動車サッカー部時代までさかのぼれば1981年にJSL(日本サッカーリーグ)2部から1部再昇格を果たして黄金期を築いて以降、43シーズンにもわたって死守してきた1部の座が危うくなっているのだ。
クラブOBの大島秀夫ヘッドコーチにバトンが渡されても浮上できないなか、同じく降格圏内にある横浜FCとの横浜ダービー(7月5日)で5試合ぶりに勝ち点3を積み上げた。気を吐いたのがクラブ生え抜きのキャプテンである喜田拓也だ。球際のバトルではエネルギッシュにファイトし、チームを奮い立たせて勝利へと導いた。この試合をラストにチームを離れるエース、アンデルソン・ロペスに対する隠れた“ファインプレー”もあった。7年連続となるキャプテンはクラブ最長。もがき続けながらも先頭に立ってきた彼のリーダーシップによって、光明が差しつつある。
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ニッパツ三ツ沢球技場での横浜ダービーは異様な盛り上がりを見せていた。
18位横浜FCとの勝ち点差は「4」。もしここで敗れれば「7」に開き、まだ15試合残しているとはいえ残留圏内がまたしても遠のいてしまう。試合前のロッカー、選手、スタッフと肩を組んだ円陣で喜田の大きな声が響いた。
「一番、チームの力を引き出すために『ダービーだぞ』としっかり意識させて、共有したいと思いました。そして『勝利しか許されない』とも。引き分けでも良いという考えがみんなのなかによぎらないように。はっきり言って、ここがラストチャンス。これを落としたらもうチャンスなんて来ない。僕たちはそのくらいの覚悟でこの試合に臨んだんです」
冷静なキャプテンの鬼の形相
背番号8の出足がいつにも増して早く、鋭い。ボールホルダーに一気に体を寄せ、セカンドボールにがっつく。特に相手のボランチ、ユーリ・ララとは激しく火花を散らし、ペナルティーエリア前で胸トラップからシュートモーションに入ったララに猛然と向かってゴールを割らせない。
極めつけは後半22分のシーンだ。

