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甲子園の風BACK NUMBER
高校野球“まさかの番狂わせ”浦和学院の誤算…34歳監督が明かす“敗戦10日後の胸中”「1週間、高校野球を見られず…」公立校・滑川総合との激闘ウラ側
posted2025/07/30 11:05
「最強世代」の浦和学院がまさかの埼玉大会3回戦敗退。泣き崩れる選手たち
text by

樫本ゆきYuki Kashimoto
photograph by
Asahi Shimbun
「敗軍の将は兵を語らず」
敗者は黙して去るのが美徳とされてきたが、今の時代、それだけでは終われない場合がある。高校野球がそうだ。夏の高校野球は日本最上位の人気を誇るスポーツであり、国民的行事でもある。教育の場であり、社会の鏡でもある。敗れたチームの監督は冷たい記者会見の場に立ち、短いコメントで敗因を語る。SNSで結果と数字が一瞬で拡散され、努力の過程が省かれてしまう今の時代。「負け=失敗」と単純化される傾向にある現代社会だからこそ、「敗者の声」をじっくり聞くことは重要なのではないだろうか。
「父なら取材拒否していたと思います」
浦和学院・森大監督。2021年、父・森士の後を継ぎ、名門・浦和学院を託された若き監督だ。初年度の2022年春のセンバツでベスト4、勢いに乗った「NEW浦学」は話題となり、全国から逸材が集まるチームへと加速した。今年の3年生は「史上最強世代」とも言われた。そのチームが、まさかの埼玉大会3回戦敗退。相手は、県立滑川総合。スコアは1-4。昨秋と今春、県2回戦で敗退しているチームだった。
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「いったい何が……?」
そんな疑問を抱き、さいたま市の学校へ向かった。記者は3年前、NEW浦学の力強いスタートを記事にしている。これは自分にとっての「答え合わせ」でもある。重い空気を予想しつつ、監督室の扉をそっと開けた。
「いやぁ……」
無理やり作ろうとする笑顔が強張っていることは、おそらく本人も気づいていたはずだ。監督就任の約半年後にセンバツ4強入り。「大会出場最年少監督」だった森監督はまだ34歳。名将への道は遠く、発展途上の青年である。
場を和ませようと、開口一番に伝えた。「今日は『言い訳』を聞きに来ました」。すると森監督は顔をほころばせ、こう言った。
「監督が父だったら、負けた直後の取材は拒否していたと思います」
取材したこの日、敗戦から10日が経過していた。

