「引退まで横浜一筋のつもりだった」落合博満の指導で開花した“ハマの大砲”多村仁志の衝撃トレード「『何故だ!?』という思いが渦巻いて…」 

「ドラフトに掛かったとき、僕は体重が63キロしかなくてガリガリだったんですよ。肩がもともと強く、スピードを生かす選手ということで、守備と走塁の面で評価されていたんです。1年目の春はバッティング練習をしてもスタンドにまったく届かなかったですし、プロとのパワーの差を痛感しましたね」

　入団当初は機動力を期待された選手だったわけだが、当時のベイスターズは“マシンガン打線”の全盛期であり、単打を打つ選手は多かったが長打力を生かしたバッティングができる右打者の日本人選手が少なかった。そこでチームは“右の大砲”を育成しようと、白羽の矢を立てたのが多村だった。

長距離砲への変貌

「バッティングで少しずつ長打が出るようになると球団から長距離砲を作れないかということで、ファームの打撃コーチだった竹之内雅史さんと二人三脚で昼夜問わず練習に励むことになったんです」

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　竹之内コーチは、首位打者に2度輝いた鈴木尚典の潜在能力を見抜き育て上げた名伯楽であり、多村の身体能力の高さに目をみはった。「打ち方、構えは何でもいい」という方針のもと、多村のスラッガーとしてのセンスを見抜き指導にあたると、見る見るうちにボールが飛ぶようになった。

「努力しましたけど、こんなに変わるんだって、自分でも驚きましたね」

　多村は感嘆しつつ、そう言った。またウェイト・トレーニングも継続して採り入れ、体もだんだんと大きくなりパワーも付いていった。

NPBでの8年間で通算.325を残した球団史上最高の外国人、ローズ　©Koji Asakura

　学生時代からMLBが好きだった多村は、当時チームにいたロバート・ローズのバッティングを参考にした。ローズはNPBでベストナインに6回も選出された、球団史上最高の外国人選手である。

「外国人選手のバッティングスタイルが好きだったので、ボビー（ローズ）を師匠に、バッティングを教えてもらっていたんです。バットももらい、だんだんとボビーと似たようなバッティングフォームになっていきました。ホームランも出るようになりましたし、きちんと結果は残していたのですが……」

　竹之内コーチ、ローズにつづき、ここでさらなる運命の出会いが訪れる。それは2001年の春季キャンプに臨時コーチとして訪れていた落合博満だった。わずか数日間の指導であったが、落合は多村に徹底的に寄り添いアドバイスを送った。

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