将棋PRESSBACK NUMBER
「子育てしながらタイトル戦」「師匠にやっと良い報告が」美しい盤上のドラマを描く女流棋士…夫は“20歳上のコーチ”、薄ピンク髪の22歳新鋭も
posted2025/07/17 06:00
清麗戦の番勝負に臨んでいる福間香奈と渡部愛は、女流順位戦でそれぞれ白玲挑戦、A級昇級を決めた
text by

田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
Keiji Ishikawa
ヒューリック杯白玲戦は序列第1位の女流タイトル戦である。第5期からは優勝賞金が1500万円から5000万円(特別賞の1000万円を含む)に大幅増額された。さらに6月6日に開かれた日本将棋連盟の通常総会で、白玲のタイトルを5期獲得すれば、女性棋士としてフリークラス編入の権利を得ることが決議された(選択は本人の任意)。
白玲戦の予選リーグに当たる「女流順位戦」は、ABCDの各クラスの最終戦が7月上旬に行われ、挑戦者、昇級者、降級者がすべて決まった。最終戦で明暗が分かれた盤上のドラマについて――田丸昇九段が解説する。
福間は「子育てしながらのタイトル戦」に
白玲戦を主催するヒューリック(不動産会社)は、「女流棋士にはもっと強くなってほしい」との思いからリーグ戦方式にした。女流棋士は対局数が増えて張り合いが生じ、全体のレベルアップにつながっている。
ADVERTISEMENT
【A級 定員は10人で各9局。挑戦1人、降級2人】
最終戦の時点で挑戦者候補は、7勝1敗の福間香奈女流六冠(33)、加藤桃子女流四段(30)、鈴木環那女流三段(37)の3人。このうち福間と加藤が対戦(A)し、鈴木が勝った場合はA勝者とプレーオフ、鈴木が負けた場合はA勝者が挑戦者になる状況だった。
福間は武器にする中飛車を用いた。居飛車の加藤は中段から圧力をかける作戦を採った。福間は馬(成り角)を巧みに使って加藤の攻めをかわすと、豊富な持ち駒を駆使して敵陣に迫り、最後は鮮やかに寄せ切った。鈴木は加藤圭女流二段(33)と対戦し、中盤では有利な形勢だった。しかし寄せをもたつき、加藤に手堅く受けられて敗勢になった。その結果、本局の20分後に勝った福間が、西山朋佳白玲(30)への挑戦者に決まった。
福間は終局後にこう語っている。
「前期の七番勝負は不完全燃焼(妊娠による体調不良から第5局、第6局を不戦敗して敗退)で終わったので、今期は対局できるありがたみを感じています。子育てしながらのタイトル戦になりますが、生活はとても充実しています」
西山白玲に福間女流六冠が挑戦するヒューリック杯第5期白玲戦七番勝負は、8月30日に都内ホテルで開幕する。
A級にいる「謎多き女流棋士」とは
白玲戦・女流順位戦のA級に在籍することは、一流女流棋士の証しでもある。その意味で残留する価値は大きい。

