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「子育てしながらタイトル戦」「師匠にやっと良い報告が」美しい盤上のドラマを描く女流棋士…夫は“20歳上のコーチ”、薄ピンク髪の22歳新鋭も
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田丸昇Noboru Tamaru
photograph byKeiji Ishikawa
posted2025/07/17 06:00
清麗戦の番勝負に臨んでいる福間香奈と渡部愛は、女流順位戦でそれぞれ白玲挑戦、A級昇級を決めた
「連盟理事になってからは、盤に向かう時間が何年もありません。対局日だけが唯一、将棋のことを考えられます。それだけに真っ白な気持ちで臨めます。今期は昇級できるとは思っていませんでした。B級は大変ですが、楽しみもあります」
清水は女流タイトル獲得が通算43期のレジェンド。来期もB級で昇級候補になりそうだ。
小高は、私こと田丸の弟子である。前期の白玲戦は4連勝から4連敗と失速した。今期は確実に勝利を重ねて昇級できた。「師匠にやっと良い報告ができて良かったです」とのメールが送られると、「この昇級をきっかけにして、上昇気流に乗ることを期待しています」と激励した。
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C級で最年少の久保翔子女流1級(19)は久保利明九段(49)の長女。4勝1敗で昇級争いに入ったが、以降は3連敗して脱落した。D級に降級したのは、以前にタイトル戦で挑戦した長沢千和子女流五段(61)、本田小百合女流四段(46)など4人。
「髪型が奇抜でも…自由に活動できそう」22歳新鋭
【D級 定員は37人で各8局。昇級4人、降級点7人】
C級に昇級したのは、8勝0敗の磯谷祐維女流初段(22=※)、松下舞琳女流初段(18)、7勝1敗の木村朱里女流初段(17)、6勝2敗の川又咲紀女流初段(29)。
磯谷は2023年9月に女流棋士になったとき、将棋連盟ではなくLPSAに加入した。「髪色が奇抜でも認めてくれ、自由に活動できそう」との理由だという。実際、薄くピンク色に染めた鮮やかなヘアカラーリングが個性的な女流棋士だ。対振り飛車で右玉を得意にしている。
10代の松下と木村には、C級でどこまで戦えるかを注目したい。川又は福間女流六冠の妹。21年に公式戦で姉妹対局が実現して姉に敗れた。元奨励会1級の今井絢女流初段(23)は、最終の2局に敗れて5勝3敗となって昇級を逃した。
降級点に該当したのは、斎田晴子女流五段(58)など7人。斎田は「振袖四間飛車」と呼ばれた戦法を武器にして、女流名人、女流王将などのタイトルを以前に獲得(計4期)。今期白玲戦の最終戦をもって引退が決まった。今後は将棋連盟の非常勤理事として、清水会長を支えたいという。
ほかの降級点では18歳、16歳、14歳の若手女流棋士が該当したのは意外だった。来期は奮起してほしい。
来期白玲戦には、元奨励会三段の中七海女流三段(26)がD級から初出場する。ただこの1年、研修会(関東・関西・東海・九州・北海道・東北の6地区)から女流棋士への昇格者がいなかった。昨年にその基準がB2からB1に上がったことによる。現在、関東・関西研修会に計6人の女性会員(B2)がいる。実力をつけてB1に昇級し、女流棋士デビューを果たしてほしいものだ。


